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「癒しの緊縛」とはどういうことか

お知り合いのバー、ナイトホークスで開催された「吉井だりあトークショー&公開ロープヒーリング」というイベントに行ってきました。

吉井だりあさん(@kiradaria)は、緊縛師あらため「結び師」として、アートの分野で縄を結ぶことの可能性を追求していらっしゃる方。さらに、これまで数々の女性と縄を通じたコミュニケーションをされてきた経験から「子どもらしく生きることができないまま大人になった女の子」への支援をしたいという思いも持っています。

このイベントでも銘打たれていた「ロープヒーリング」。どことなく耳触りのいい言葉で置き換えたような気もして、緊縛を癒やしの手段として用いることが、分かるようで分からない……という思いもあったのですが、興味深い体験だったので気づきを言語化してみたいと思います。

ちなみに私は、痛いのも怖いのも大嫌いで、血と暴行、人が死ぬコンテンツは映画すら見れない。SMは、ストリップで好きなお姐さんがSM興行に出ていることから興味関心を持っているものの、好きかと言われると、自分との距離感を見つめているところです。

イベントとしては、吉井だりあさんとモデルの椎名イチカさん(@morumoru_417)のショー観覧、歓談、そして希望者それぞれに公開ロープセッション(縛られてほどかれてを楽しむ)といったプログラムを、ワインや軽食をいただきながら楽しみました。

緊縛が行われているところとしては、個人間、ショー、緊縛講習、縄会、SMバーなどいろいろありますが、会場が飲食店であるということ、雰囲気的に気後れしない感じ(参加者の方が話しやすい)があって、居心地のいい空間でした。

私はだりあさんと2人だと、何を話していいかわからなくなってしまうのですが(あこがれ系の方とお会いするとそうなってしまう)、複数人で歓談するので、だりあさんがなぜこの世界に入ったかというところから、緊縛の歴史は研究されているのかといったところまでいろいろ興味深いお話を伺いました。こういう話ってどこまで伺っていいのか、聞いてしまうこと自体が失礼なのではないかということも思ったりするので、良い機会でした。ちなみに「緊縛の歴史書は海外で研究されたものの翻訳書がある」と聞いたのですがこれかな? ちょっと気になっています。

あと、モデルのイチカさんによる話がなかなか興味深かったです。ショーモデルさんに、縛られているときの感想やなぜこの世界に入ったか、などを聞く機会は少なくて貴重でした。過去何度かショーで拝見して、見た目の美しさ、華奢さから寡黙な方だと思っていたのが、明るいあっけらかんとした感じのお話の仕方をされる。イチカさんは、サブカル心からアングライベントに行くようになり、ここが自分の居場所だと感じた。そして、最初は女性性を消費されるような言動に対してNoを言うことができなかったのが、しっかりと嫌なものは嫌と言えるようになる。そして、「それエロいね!」と明るく言われたりするのはとても嬉しいと思えるようになった、というあたりの話がとても共感しました。

私の話でいうと、ストリップ劇場に定期的に行くようになってもうすぐ4年になるのですが、他のアングラスポットでいうと、SMバーも、デパートメントHも、フェチフェスも、1〜2回くらいしか行けてない。ストリップは、「これはエロ目的じゃなく、アートでサブカルなんだ!」みたいな、エロに罪悪感があるような、そんな理由付けをして行っていると言えなくもない。他のスポットは「ちょっと見てみようかな」くらいで止まってしまっている。でも自分のなかのいろいろを乗り越えた結果、欲望を満たすでもない消費するでもない、明るくて楽しいエロ、「わ〜これえっちだな〜!尊い!」と言って、素敵なものだと人に教えたくなるような、そういうのをつい直近求めていることに気づいたのでした。例えばTwitterに書いたこんなつぶやきのような。

だりあさんに縛られるのは2回目。1回目もナイトホークスのイベントで、そのときはこのような記録動画を録るほど「何が起こっているのか記憶・記録しておきたい!」という思いが強く、自分がそういう状態なのはだりあさんにバレバレだったのでした。

ショーでは、縄を受けているイチカさんが、完全アドリブにも関わらず気持ちよさそうにしているのを見て、「なるほど、何も考えないのでいいんだな」と理解しました。完全にそうできているかといえば違うところもあったけれど、自分がどういうふうになっているかは、後で写真を見ればいいかと思ったり、自分の外の状況を気にせず目を閉じているなど、2回目ならではの楽しみ方をしたと思います。また、「えっちになってるといいな〜」と思いながら人に写真を撮ってもらっていて、後から見て楽しんでいました。写真はこんな感じ。


人に拘束され委ねるという、究極の信頼関係がないとできないこと。肌のふれあい、体のコンディションを見てもらうこと、インタラクティブな縄の触れる感触、気にかけてもらうこと……。美容院のシャンプーで「かゆいところありませんか?」と聞かれるのとは違う、深いところまで入り込んだ身体コミュニケーションを、初対面やそれに近い人達相手にするのはすごいなと思いました。気持ち良いと感じました。他で体験的に縛ってもらったときは「意外としんどいな……」という感想を持ったので、縛りにもいろいろあるんだなと思いました。

あと、だりあさんとイチカさんのショーの次に縛ってもらったことで、自分がショーの一部になったような気分がしたのは嬉しかったです。

今回、だりあさんとイチカさんと、ナイトホークスの川原さんには、コミケで制作した書籍をプレゼントしました。

想像以上に喜んでいただいて、お持ちして本当によかったです。ストリップの本、アングラ業界を、オーバーグラウンドな立場にいる私の視点で光を当てて、求めている人(多様な身体の美しさがあるのだと知って喜びを感じたい女性など)に届き、業界の盛り上がりと存続に貢献をしたいという意図の一環で制作をしているのですが、業界の迷惑にならないといいな……と思いながらやっているところもあり、こうやって受け入れてくださってとても嬉しかったです。自己肯定感に関するブックレビュー本も、きっとだりあさんの救いたい女の子たちの参考になると信じて……。

癒やしの緊縛――冒頭の問いに戻ると、癒やされることと縛られること、一見すると相反するように思える行為は、完全に相手に委ねることでそれが実現できるなと思いました。実感としては、分かるところもあるし、もう少しその境地に至るまではいくつかの過程が必要とも。癒やしを理解するまでの変化を楽しんでみたいところもあります。そして、こういう緊縛にまつわる、消費するエロではない、繊細な心の動きや感想を共有できる場というのも同様に癒やしである。そしてさらに、エロに向き合うというのも同様に癒やしなのでは、と、いろいろな発見があった催しでありました。

お読みいただきありがとうございました! よかったらブログものぞいてみてください😊 https://kondoyuko.hatenablog.com/