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日本の品質力を維持する仕事の原点

日本の品質力の秀逸さは世界でも有名だ。
ビジネスに関わる者として世界に誇れる宝のひとつである。
車、家電製品、化粧品、ゴルフ道具、日用品など、どれをとっても外国人消費者の評価は高い。
特に新興国では、日々の購買力の増大に合わせて、日本ブランドに対しての関心や信頼感は高まる一方だ。
品質は広い意味でいうと、商品の販売後のアフターフォロー、接客対応などのサービスやおもてなしの世界までも対象になる。
しかし、「品質とは何か?」を考えそれを高めるノウハウを学ぶ際の原点は、“ものづくり”の世界にあると私は思う。
併せて、日本の誇れる品質力は中小企業が担っているといえる。

中小企業といえば、熟練工や腕利きの職人に支えられた町工場という印象が強い。
もちろん、高品質のものを作るためには、すぐれた製作機械や工具なども必要だが、やはり、品質確保の最終局面での差別化要素は人の仕事だ。
ハイレベルの品質の根っこには匠の職人の存在がある。
この職人が行う仕事から連想できる言葉はなにかといえば、

「こだわり」

であろう。

色々と話題の中国などからみれば、余計な仕事に映るのかもしれない。
では、このこだわりとは一体なんなのか?
感覚的には、人並みはずれた情熱、信念、職人気質、思い入れなどが浮かぶ。
しかし仕事を噛み砕いて考えると、こだわりとは細部まで目を光らせ、きめ細やかに丁寧に仕事をすることなのである。
それには、高度なスキルが必要なことはいうまでもないが、品質確保の前提として、各工程においてさまざまなチェック作業を徹底的に行っているに過ぎないのである。

大雑把な仕事をする人には、日本の品質を維持発展させることはできないと思う。

私も働いてもうすぐ30年近くになる。
さまざまな職業の人と、仕事してきた。
大きく分けて、仕事には、ものづくり系の仕事とそれ以外の仕事に分けられると思う。
随分と乱暴な区別ではあるが、品質を考えるときは、おおむねこの分類でもその差は歴然と出るものだ。
一言でいえば、ものづくり系の人の仕事は丁寧である。
例外も少しはあるが・・・。

一方、物販系や金融系の仕事に代表される人たちは、大雑把だ。
必ずしも悪いということではなく、仕事の性質を見ているとあまり細部にこだわらなくても問題がない領域が多い。
また、大企業と中小企業の仕事を対比させて考えておくことも品質力を考える際に役立つ。
大企業は、その性質からか、あまり細部にこだわる人が少ないように感じる。
プロジェクト単位でいえば、大企業の役割は大抵が上流工程なので、傾向としてそうなりがちだ。
例外もある前提で書くが、ほとんどの場合は、きめ細かい労力を使う人手の現場仕事は中小の人が担当している。
納期に追われ、使える資源や人員に限りがあり、大きなプレッシャーの中、品質を確保するのは、中小企業の人たちである。

PDCAというマネジメントサイクルがあることを、日本人なら知っている人は多いだろう。
実は、世の中の仕事はすべてこの基本的な手順に従って進められている。
いや、本来は行われていないといけないのである。
行われていれば、仕事の品質は間違いなく向上する。
実は、仕事が出来る人は、PDCAを習慣的に当たり前に行っている。
特に、品質を確保するために不可欠なのは、C(チェック)の工程である。
このチェックを疎かにしている人で、仕事のできる人はいないと言っても過言ではない。
特にものづくり系の仕事では存在しえない。
ところが、このチェックの仕事というのは、一見、辛気臭いしつまらない。
だから、ついつい疎かにしがちだし、気持ちも入らない。
しかし、本物の仕事人は違う。
本当の品質確保のためには、絶対に必要な工程だと認識しているが故に、当たり前のように習慣として黙々とこなすのである。
日本の強さの原点は、ここにあると私は思う。

(本記事は、ブログ「近藤昇の会社は社会の入り口だ」に、2011年3月30 日に投稿したものです。)