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シリコンバレーから日本の将来を遠望する

メディアは連日、「AI」「IoT」「ビッグデータ」のキーワードを誌面に踊らせ、大騒ぎしています。もちろん、その一部は有用な活用も期待できそうなリアリティある報道もあります。しかし、その雰囲気はかつての不動産バブル、その後のITバブルを彷彿させます。いや、今回は専門用語が飛び交い、ほとんど実態が見えない話ばかりなので、とてつもなく大きなバブルなのかもしれません。

先日、冒頭のキーワードを集積させたメッカともいえるシリコンバレーに3年ぶりに訪れました。30年来の知人である中国人の陳さんに会いに行くことも目的のひとつ。
彼は25年前にカナダに渡り、その後アメリカで活躍中。米国のIT企業を代表するシスコなどで活躍し、今はFacebookで働いています。陳さんとの出会いが、私の海外ビジネスの礎となったのは間違いありません。私がまだ20代であった頃、神戸にあるIT系人材派遣会社で彼とは出会いました。私が立場上、上司でしたが、彼から刺激を受けたことの方が多かったのは事実です。陳さんは英語を普通に使いこなし、とてもハングリー。当時の中国の様子なども彼から教えてもらいました。
今でもその当時のことを鮮明に思い起こすことができます。あれから四半世紀がすでに過ぎ、彼はICT革命の旗手であるFacebookで活躍しているのですから不思議なものです。今のところ、私はFacebookの利用者です。
今回の訪問では、次のステージに向けた協業の話をジックリとでき、とても充実した時間が過ごせました。

もうひとつ痛感したことは『創造的破壊』です。ICT革命一色で世界は語られていますが、アメリカ本土では既存ビジネスの創造的破壊が劇的なスピードで進んでいることが体感できました。15年ほど前、デコンストラクションをテーマにした経営書を読んで、心が躍った記憶があります。ところが、日本においてはネットビジネスは誕生しましたが、創造的破壊と呼ばれるような事象は起こっていないと感じます。
ところが、アメリカではそれが現実として押し寄せています。
世界的に有名な「UBER」は既存のタクシー業界を破壊しました。また、そのUBERも経営陣の不祥事があり、ライバルである「LIFT」に逆転されそうです。
ベトナムでも、「UBER」「CRAB」の台頭で大手タクシー会社の運転者が4000人退職というニュースも報じられました。

この事象を日本に当てはめた場合、どうでしょう?
こんなドラスティックな業界淘汰が日本で起こるでしょうか?
日本の場合、まず既得権益の保護が優先されることは想像に難くありません。
だから、日本は世界から「ガラパゴス」と呼ばれ続けるのです。世界で伍して、世界に貢献するためには、創造的破壊を自らが受け入れる体質に変えていく必要があります。そのためには、多くの生活者が目覚めることだと思います。便利すぎる生活が当たり前のように続く日本の生活者はモルヒネで痛みを忘れてしまっているのと同じです。早く目覚めるべきです。弊社がかねてから追い求めてきた“アナログありきのICT活用”においても、米国の進化のスケールは大きいと実感します。今回の出張中にアマゾンがオーガニック食品などを扱う大手チェーンである「ホールフーズ・マーケット」を一兆円を超える史上最大規模の金額で買収するというニュースが流れてきました。宿泊したホテルのすぐそばに、偶然ホールフーズ・マーケットがあり、滞在中、毎日足を運びました。3年前に訪れたときよりもその進化は歴然です。
今回の買収はネットとリアルの融合と報じられています。とはいえ、これは珍しいことではありません。日本でも15年ほど前からクリック&モルタルが流行り、そういう期待は常にありました。しかし、米国のような劇的な変化はまだまだ先です。
当たり前の話ですが、ECなどはリアルが土台になければ成立しません。商品を販売しても、配送する人がいなければ、EC業界は立ち行かないのです。帰国後、同じくアマゾンが紙の書籍ビジネスに本格参入とNHKが大きく取り上げていました。
米国では、若者のデジタル離れが進んでいます。紙の本の回帰が始まっているのです。

人間はネットやICTだけでは疲れてしまいます。日本でもアナログ回帰は急速に進むと思われます。しかし、その時に創造的破壊が日本で起こるでしょうか。
大手企業はカニバリゼーションの問題で、なかなか創造的破壊を実現できないでしょう。
自分の会社を破壊しながら新規事業の創造は至難の技だからです。だからこそ、ベンチャー企業や中小企業のチャレンジが重要になるのではないでしょうか。日本は起業家の輩出が世界の平均よりも下回っています。一方、ICTだけは、どんどん浸透しています。旧態依然とした仕組みやビジネスモデルにいくらICTを持ち込んでも大きなイノベーションには繋がりません。
日本でいえば、シニアや来日する外国人など、このあたりを起爆剤にICTやAIを有効活用し、人間らしい生活ができる国として世界に知らしめてほしいです。
遅いことはありません。この実現に、弊社も貢献していきたいと思っています。

(本記事は、2017/06/28 BRAIN NAVI26号に掲載したものです。)
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