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仕事のスキルはますますITと結びつく!

 前回のコラム『ITは「仕事ができる・できない」の格差を増幅する!』の中で、「ITによって、仕事ができる・できないの格差がさらにつくようになる」「結果として仕事ができる人間には多くの仕事が振られ、それは給与格差などにも現れてくる」という主張をした。「できる人」に仕事が多く振られるのは当然だが、ここでちょっと根源的なことを考えてみたい。「できる人」はなぜ「できる」のだろうか。そして、それはどうITに結びつくのだろうか。
 「できる人」が「できる」のは、端的にいえば情報の大切さを熟知し、その収集・活用に手間暇を惜しまないからである。私の見る限り「できる人」というのは例外なくこの能力に長けていて、新聞・雑誌を読むにしてもただ漫然と字面を追うのではなく、そこからいかにスピーディーに効率よく情報を集めるかという術に長けている。またビジネス面においては、取引先企業の情報、市場動向はいうに及ばず、所属する会社や部門の情報、さらには同僚のスケジュールまで、自分の仕事に関係する情報を的確に把握している。

 それでなくとも現在は多種多様な情報が飛び交い、それはITによってますます加速されている。「情報を制する者がビジネスを制する」とはしばしばいわれることであるが、こうした中で的確な判断を下し、成果に結びつくアクションを起こしていくためには、膨大な情報の中から有益なものを取捨選択していく能力が必要になるのは当然のことだろう。

 「できる人」は、何か新しい仕事が振られると、それをこなすために新たに大量の情報を自分に集中させる。これはある種、本能的・反射的なもので、そういう習慣が身にしみついているのだ。それは結果的に他の仕事の進捗にも好影響を及ぼしていき、ますます「仕事ができる」ようになる。理想的な循環がここに生まれる。つまり「できる人」を「できる人」たらしめているのは、第一に「情報収集・活用スキル」なのだ。

●「仕事ができる人」に共通に見られるスキルとは?

 もちろん「できる人」は、情報収集・活用以外にも多くの能力を持っている。例えば語学力、あるいは業務に求められる専門知識もそうだし、何かしらの資格ということもある。もちろん業種や業態、社内での立場などによって様々ではあるのだが、しかし共通するスキルもある。それは[コミュニケーション・スキル][プレゼンテーション・スキル][リスクを察知するスキル]だ。「情報収集・活用スキル」に加えて、こうしたスキルを保有しているということもまた「仕事ができる」という評価につながっているのである。

 例えば[コミュニケーション・スキル]。顧客や取引先に好感を持たれるようにふるまったり、TPOに応じた対応をしたりといったことは仕事をスムーズに運ぶ上では非常に重要なものであるし、同時に「情報収集・活用スキル」とも密接に関係している。また、現在ではプロジェクター等の普及・発達によって、クライアントに対してプレゼンテーションをする機会もかつてないほど増えており、そうなれば[プレゼンテーション・スキル]の有無も、仕事の成果には大きく影響してくる。

 同様に、顧客のささいな一言から重大なトラブルが発生する可能性を察知したり、部下や同僚の顔色や目線の動かし方から、退職につながるような不平不満を発見したりといった[リスクを察知するスキル]も、ビジネスシーンにおいては必須だろう。そしてこのスキルも[コミュニケーション・スキル]と同じく、「情報収集・活用スキル」とも不可分に結びついている。なぜならばリスクは、まずは「情報」として察知されるからである。

●ITは、もともとのスキルにドライブをかける“増幅機”にすぎない

 そして、[コミュニケーション・スキル][プレゼンテーション・スキル][リスクを察知するスキル]に「情報収集・活用スキル」を加えた4つスキルは、すべて何らかの形で全てITスキル(ITを使いこなすスキル)とも関わってくる。「情報活用」「コミュニケーション」とはまさにIT化の目的とするところであり、グループウエアにしてもSFAにしても、その実現に大きなポイントを置いている。また「プレゼンテーション」は、日本ではITツールの普及によって一般化してきたのであり、今やITスキルと密接不可分だろう。

 ITスキルとの関わりという点では、「リスクを察知するスキル」はいささか異質な感じを受けるかもしれない。しかし、これは「収集した情報の中から、潜在的なクレームを発見する能力」と考えれば理解しやすいのではないか。そんな流れの中でITとの接点を考えると、例えば、電子日報などで共有された情報の中からクレームを発見し、直ちにITツールを用いて関連部署を巻き込み、解決のためのアクションを取るという展開が考えられる。そう考えると、これは企業の生死がかかった一大テーマであることが分かる。

 こうしたスキルを育む土台となるものは、前回のコラムでも述べた、より根元的な仕事スキル、すなわち「合理的・論理的に仕事ができるスキル」「現状を打破しよう・改善しよう、という強い意志」なのである。こうしたスキルを社員一人一人が育むことによって、はじめてITは効果を発揮できる。つまりITとは「もとからあるスキル」にドライブをかけるだけの“増幅機”でしかなく、はなっから存在しないスキルを運んでくる“魔法の箱やワイヤ”ではないのである。

(本記事は、「SmallBiz(スモールビズ)※」に寄稿したコラム「近藤昇の『こうして起こせ、社内情報革命』」に、「第39回 仕事のスキルはますますITと結びつく!」として、2002年12月16日に掲載されたものです。)
※日経BP社が2001年から2004年まで運営していた中堅・中小企業向け情報サイト

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