【よくわかる!台湾語の紹介01】台湾語ってどんな言葉?/台語是啥款語言?
今回からは、「台湾語とはどんな言葉なのか」を、日本の方向けに簡単に解説していきます。(別のブログで320いいねを獲得した記事を再編しました)
Tsit-pái ê 話題tio̍h-sī”台語是啥款語言?”, Tshiánn to-to tsí-kàu(請多多指教)!
0)概要
台湾語とは、閩南語をベースに、台湾で独自の進化を遂げた言語です。元は総人口の70-75%を占めるホーロー系の人々の母語ですが、日常会話や商談などでは民族を越えて話されており、台湾を代表する言語という意味で、「台湾語(Tâi-gí/台語)」と呼ばれています。いわゆる中国語=北京官話とは親戚関係にあるものの、発音・語彙・文法まで異なり、その距離は英語とドイツ語より離れているといわれています。
1)声調や音声の特徴
たとえば、台湾語には声調が7種類あり、それぞれ、後ろに音節がつくと転調するという特徴があります。高いところから一気に下がる音(2声)が、下がらず高いところで平らに伸びる音(1声)になる、というような法則です。転調は、実は話しやすいように変化しているので、慣れればそれほど苦になりません。また、語尾に-p, -t,-k,-hがつく入声や、鼻からも息を出して発音する鼻音(-nn)なども、台湾語の大切な特徴です。
私は個人的に、台湾人の小鼻が丸いのは、この鼻音を発音するために進化してきた為ではとさえ思っています(笑)。
2)語彙の特徴
また、一音節の動詞や形容詞がとても豊かで、意味するところが繊細なのも特徴です。たとえば、「剥(む)く」という単語は、ピーナツの薄皮などを指先で「lut黜」、みかんなどを手で「peh擘」、大根などを刃物で「siah削」と、全て異なる単語で表されます。
また、文法では、「ū有+(形容詞や動詞)+bô無?」構文というものがあります。たとえば、「彼女は綺麗ですか?」は、「I ū súi bô伊有水無?」となります。また、動作の対象を表す「kā」を使う構文も有名です。たとえば、「Góa kā lí kóng(我kā汝講)...」(言うけどね…)と、「言う」の対象を導く「kā」が入ります。
これらは、中国語には見られない構文ですが、台湾華語(台湾で話される中国語)は、台湾語の影響を強く受けているので、「她有沒有漂亮?」・「我給你講...」という風に話す人が多くみられます。
台湾語の特徴や台湾語と華語の違いを簡単にまとめてみると、次のようになります(いずれも筆者作成):
3)表記法は?
台湾語の表記法は、漢字とローマ字の混ぜ書きが主流です。漢語由来ではない語彙が全体の20~30%も含まれており、それらは主にローマ字で表します。日本語でも、「~と」・「~の」などの助詞や、「ところが」・「しっかり」などは、通常ひらがなで書くのと同じですね。
また、ローマ字のシステムにも、いくつか種類があります。一番代表的なのは、教会ローマ字(白話字/POJ)で、19世紀の後半にはすでに確立していたものです。『トラベル台湾語』を含め、日本で出ているテキストのほとんどがPOJを採用しています。もう一つ、2006年に台湾政府が公式表記法と定めた「臺灣閩南語羅馬字拼音方案」(台羅/TL)は、POJとは少し異なります。TLも台湾で出版されている教科書などで使われており、最近の雑誌や文書では主流になってきています。
私自身は、昔はPOJ派でしたが、最近はTLにも慣れて、そちらで書くようになってきています。
もう一つ、近年は、台湾人の間で、新しく漢字を作ったり、華語の漢字の音だけを使って、当て字的に表す方法が、非公式ながら広まっています。日本の万葉仮名的な感じですね。たとえば、本来「當選」(当選する、の意)と書くべきところを「凍蒜」と表すなど。当て字の乱立は正書法が定着するのを妨げるため、あまり推奨したくはないことですが、一応の流行として、追記しておきますね。
===
これからは、別の記事で、それぞれの特徴をピックアップして、面白おかしく紹介していきます。お楽しみに~!
(2016年「高雄エクスプレス」12月号掲載の原稿に加筆修正)
サポートいただけたらとても嬉しいです。どんなに少額でも、執筆活動にとって大きな励みになります。より良質の投稿や、書籍出版などの形で、ご恩返しをいたします。サポートどうかよろしくお願いいたします。