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女のアンダーウェアの話

いやはや、毎日暑いですね。
今年もまたユニクロで、夏は毎日着ているエアリズムのブラトップを買い足していてふと思ったんですが、日本の女性下着にまつわる常識って、たかだか10年前と比べても、かなり変わった気がしませんか?
何のデータも参照せずただの肌感覚で恐縮ですが。

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私は昔からとにかくブラジャーが嫌いであんまり着たことがないし、パンティも装飾のないシンプルなデザインが好きです。
スタンダードなワイヤーブラって、フラワーモチーフのレースやチュールを貼り込んだフェミニンなデザインがほとんどで、型崩れしないために洗濯にも気を使う、結構値段も張るのに全然自分の趣味に合わない、それを、洗い替えのために何枚も買うなんて…ねえ。
ということで日常的には高校生の頃からずっとスポーツブラかブラトップのヨガウェアを着てたし、ロンドンに住んでた頃の夏はほぼノーブラで過ごしてた記憶がありますね。もちろんイギリスにもフェミニンな下着の市場は日本と同様にあって、それを着てる人が多数派ではあったでしょうが、ノーブラにTシャツやキャミソール一枚で往来を歩いてる女だって決して珍しくはなかったですよ。

だから30歳も間際で日本に帰国して、初めて勤めた日本企業、アパレルの企画室でサンプルフィッティングのために着ていた服を脱いだ時、一緒に居た同僚の女子にいきなり
「スポブラ!? 」
と驚かれ、
「ちょっと見てこの人、スポブラ!!」
とそこにいた全員に大笑いされて、びっくりしたんですよね。
そんなに珍しかった?って。

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ブラジャーの試着には、大昔に一度だけ行った記憶があります。あれはなんでだっけな、確か当時の恋人から、私が年中スポブラにジャージで寝てるのが嫌だ、時々でいいから女らしくして欲しいみたいなことを言われて...だったかな….?
私も若い時は恋人や好きな男の人から、貧乳だとかタイプじゃないとか言われればちょっと傷ついてたし、好きな相手の欲情する性的ファンタジーがあるなら喜んで受け入れたいみたいな気持ちはあったんですよ。

初めて行ったランジェリーショップにて、上半身の腹から背中から流れるような手つきでブラカップにお肉をかき集め、私の胸に見慣れぬ谷間を一瞬にして出現させたお姉さんは満足そうに

「お客様は65のCカップですねー」

と仰いました。

なるほど….そうか、乳の谷間とはこうやって作るもんだったのか。いやー…お見事だけど、私にあった方が良いかどうかは微妙だな。
自分の見た目としてなんかしっくりこない、あと、アンダーの締め付けがきつくて気になる。

「痛いですか?」

痛くはないです。けど、結構締めつけられてるなーって..

「それならこれで合ってます。これくらいは締めて支えないと、お胸は脂肪になって流れちゃいますからね。正しいサイズのブラを毎日つけるのが、体型キープのためにも大事なんですよ」

ずっと着けてたら苦しくなってきません?

「逆ですね、毎日着けてれば慣れて違和感なくなります。」

そうなのか…
いや、なんか腑に落ちないぞ?

昔は着物着るために晒で潰してた胸を、今はアンダーとトップの最大差を是が非でもキープって、なんで?
固定しないと流れるものなら、流れたついたところがそのお肉の本来の居場所なのでは?
ところで中国の纒足や18世紀のコルセット文化についてはどう思います?

などなど、後に溢れた疑問もすぐに思いついたわけではなく、その時は自信満々のお姉さんに押されてそのまま上下のランジェリーセットを購入してしまい、首を傾げながら持って帰ったんですよね。
そして、それを恋人とのデートに着て行ったかは全然覚えてない;
彼とは大してその後長続きもしなかったし、ランジェリーも結局ほとんど着用することもないまま行方不明です。

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私が30代の前半を過ごした東京のアパレルと直営ショップの同僚たちは、それまでの人生で女子の集団には一切馴染めたことのなかった私が、初めて親しくなれたガールズグループでした。
下着ブランドやトレンドの種類や、デートの時はパンティとブラはセットのデザインで着るのがマナーみたいなことまで、私の日本女性のジェンダーイメージは、主にそこで得た情報や経験がベースにあるんだと思います。

それが当時の一般常識だったのか、レディースウェアの職場だったせいかは分かりませんが、とにかく自分が思ってる以上に私は、日本の同世代の人たちと服装やジェンダー規範についての常識を共有していないんだなと思い知った環境でした。

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そして10年以上の時が流れて、2024年の夏ですね。
今、20代前後の若い女性は、「勝負下着」なんて言葉や、ユニクロのヒートテックみたいな袖のある女性肌着が「ババシャツ」と呼ばれていたことをご存知でしょうか。
ババシャツもボクサーブリーフ型のパンツも冷え性のおばさんが着るもの、ファッション性に反するダサいものという認識って、今は過去のものになったんでしょうか。
そして同年代の男性の意識も、それにつれて変化したんでしょうか。

今思えば、女の下着において機能性が女性性のイメージに打ち勝った時代の転換点は、ユニクロのヒートテックとエアリズムやブラトップのヒットだったと思います。

服の歴史、人のイメージ、ジェンダー規範、機能とファッション。
インターネット時代のせいか、怒涛の出産育児と自営起業を経たせいか、ここ10年の時代の流れは特に目まぐるしく、あっという間に自分が40代も半ばになっていることには呆然としつつ、
今は何のターニングポイントにいるんだろう?
みたいなことを日々考えながら、今日も同じ東京の、衣服とファッション周りで働いています。

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