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【バルダ漬けのサタデー】

立春が来たって本当の冬の寒さはこれから。
そんな凍えそうな2月のよく晴れた週末。
私にとってその日は、待ちに待ったバルダ・デーでした。
ヒカリ座でアニエスバルダの映画3部作のうち2作品を観ました。バルダは『シェルブールの雨傘』のジャン・ドゥミ監督の奥さん。ご本人は独創的なドキュメンタリー映画をたくさん作っています。
昨年90歳で亡くなりましたが、一昨年に観た『顔たちところどころ』はまだ記憶に新しく、あのチャーミングなバルダにまた会える機会に感謝しつつ、やってきたわけです。ヒカリ座ってほんと、素敵な映画館。

13時の回はセルフポートレート映画「アニエスによるバルダ」。
17時の回はバルダの家の近所の商店街の人々を淡々と映した「ダゲール街の人々」。どちらも面白かった。

特に気にいったのは古びた香水屋で生きた化石みたいに佇むおばあちゃんのエピソード。
一日ずっと店の中で険しい顔をしてじっとしているおばあちゃんが、日が暮れるといつも扉を開けて店の外に出る。
「出かけたいわけでなくなんとなく外に出てみたいだけなんです」と、物静かなおばあちゃんに代わって説明するおじいちゃん。バルダはこれについて、
「夕暮れを見ると、大人はその中に消え入りたい願望をもつ」というような見解を出します。

夕暮れ→消え入りたい願望。そうかもしれない。
夕暮れってほんの一瞬だけど、なんかすごい説得力があるというか、人間の領域が及ばない圧倒的なものを見せつけられている気分になるな。
それでもって、自分もその一部になれたらどんなにいいかって、思い焦がれるというか。。

そういう心象を、ちょっとした夫婦の会話から切り取って浮かび上がらせるのがバルダのすごい所。

このエピソードは忘れないように、ちゃんと心の中にしまっておこう。

映画の後、外に出るともうすっかり夜。お腹が空いたので、小籠包を食べて帰りました。全ては夢だったんじゃないかと思いながら、バルダと素敵な2月の土曜日にありがとうと心の中で呟きながら。

余談
映画の合間に買ったYOUJI YAMAMOTOの白シャツ。写真だと分かりにくいですが、襟が面白いです。襟をたてたり、ジャケットの上に載せてもいいのかも。これまでにない特別な一枚になりそう。手持ちの同じブランドの服と合わせるとこんな感じ。早く温かくなって欲しい。

※この投稿は2月8日の出来事を書きました。写真はそれ以前に撮影したものもあります。