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「嫉妬の化け物」の飼い方

 先日掲載した記事『インサイトを発見されてしまった私たち』を、ありがたいことに多くの方にお読みいただきました。ありがとうございました。
 基本的にこのnoteは自分の備忘録として記載していますが、自らの考えや経験を言語化し公開することで、〝人に伝わる形での整理〟ができ、読んでくださった方への知見の共有にもなる場合があるのだと感じています。

 そこで、先日の記事内にも記載したマシュマロ相談
「二次創作を始めた結果、他者に抱くようになった嫉妬への対処」の回答を本noteにも再掲したいと思います。
 『インサイトを~』ではエンタメ化への自覚について書きましたが、やはり自覚をして律しようと考える必要がある程には、私も様々な感情を抱いていました。今回は感情そのものの取り扱いについての話です。

――――以下マシュマロ回答――――

 自分は最近二次創作で字書きになった者です。そうすると以前は読めていた作品に嫉妬してしまい、上手く読めなくなってしまいました。そうした経験と対処方法をお聞きしたいです。(※一部抜粋&編纂)

 早速ですが、地獄の釜の蓋に手を掛けてしまいましたね。ようこそ。
 最初に端的にお答えするならば、私は「承認欲求と向上心と達成感と愛と怒りの煮凝りから生まれた嫉妬の化け物」を飼っています。はい、こいつがとんでもないヤツです。なんてったって化け物ですから。よく「飼い慣らそう」「コントロールして上手く付き合おう」といったアドバイスは見ますが、そう簡単にはいきません。追い出してしまうことも難しい。ヤツはここの環境が一番住み心地が良いようなんですね。
 なのでまずは、「棲みつかれてしまったものは仕方がない」と諦めるところから始めましょう。


■嫉妬の化け物との付き合い方 


〝趣味のこと〟に対して真剣に打ち込んでいる時、私たちは趣味と自分と一対一の状況になることは案外難しいです。特に〝皆で共同で幻覚を見る〟ことで連鎖的に広がっていくことが多い二次創作なら尚更。人がいれば人と比べるのは当然のことだと思います。
 でも同時に、こんな意見も見ますね。

「趣味に真剣になっても……気楽に楽しもうよ」「二次創作なんだから優劣はないでしょ」「私は私が楽しければいいから比較する人の気持ちわからないなあ」「比べるのは他人ではなく、昔の自分であるべきでしょう」「それって疲れない?損な性分だね」

 これは自分の内なる声でもあるでしょう。
 えぇ、その通り。疲れます。
 推しCPを見て萌えて悶えて滾って生まれた解釈をどうにかこうにか作品にしたくてあがいてもがいてああでもないこうでもないと頭を抱えてようやく出来た作品にやっとブクマが10つく間にあそこの字書きさんの新作が素晴らしいとTLは感想の嵐なんですもん。ウッ! となりながら見に行ってみると、これがどうして大変素晴らしい。私が稚拙な表現でしか表せなかった解釈を、心臓を掴むほどに訴えかける文章表現と緻密な構成と生きた言葉を話すキャラクター描写で描き切っているんです。完敗、降伏。五体投地。あー、すげぇ。めちゃくちゃ萌える……。
 同じ作品、同じCPを同じように愛して表現したのは同じなのに、アウトプットはこの差。これじゃあ、私の愛が足りないのか。愛の証明ができないのか。そもそも私のこの想いと必死に頭を使い心を震わせ考えたことはなんだったのか。もういっそ他の人の作品を見るのをやめちまおう。私と推しCP、二人きり(三人?)だけの世界に行きたい! 二人きりで出られない部屋に閉じこもりたい!
 こんなややこしい感情、地獄でしょう。気楽に楽しみたいです。優劣なんて考えず、私は私の楽しみだけを追求したい。それが出来たら、どれだけ楽でしょう。時に私は、なんの作為もなく心からそれが出来る人を羨ましく思います。
 でも、ある時勝手に棲みついたこの化け物は、勝手に出て行くのを待つしかありません。
 私もなんとか退治してやろうと、躍起になって色々と試しました。

 ・こんな化け物を飼っておらず飼っている人は愚かだと思っているその道の成功者に相談する(愚かなのは自覚しているので、相互信頼がある人間同士の率直なアドバイスを求めたため)
 ・結果が付いてくれば嫉妬しなくなるかもしれないと努力してみる
 ・あえて人の作品を見まくって自分のテンションが上がった瞬間だけを記憶するようにする etc……

 今のところ結果は出ていません。ようやく、些事を投げるところからがスタートだと諦めたところです。


■見える景色と、これから


 この化け物がいないほうがずっと楽。それは確かです。いない人に対して「私は狭量だな……」と罪悪感と劣等感を抱く必要もありませんしね。
 ただ、いない人には見えない景色は確実にあります。地獄以外にも。
 何の捻りもない言葉ですが、悪いことばかりではありません。

・私たちは、嫉妬や劣等感を火種に燃え続けることができる
 正直、これは不毛な感情だと思っています。誰よりも上手くなることは出来ないし、自分との戦いにしたって、自分で百点満点もう何も書かなくていい! なんて作品が生まれることはそうそうない。私たちは永遠に、自分より上手い(と思う)誰かに対してギリギリしながらこう思うんです。「もっと上手くなりたい!」
 これは尽きることのない火種です。跳躍のためのバネです。
 私は昔から今までずっと何者でもありませんが、三年程前にこの火種を持ってから、ずっと燃え続けてきました。未だに私は何者でもありません。でも、マ主さまのように相談してくださる方が少しずつ増え、ようやく最近文章に携わる仕事にも関わるようになっています。
 こんな景色、火種を持っていなければ見ることはなかったでしょう。

・自己認識が高まることで化け物は大人しくなる
 ここまで来てようやく少しだけ、ヤツは大人しくなりました。
 盛大に暴れもがくことで、自分の強み、得意分野、苦手なこと=「自分の戦い方」がわかってきたんです。これを掴むことでようやく、化け物に振り回されない人の正論「これは自分との戦いでしょ」の意味が腑に落ちました。
 暴れた結果、〝自分は万能ではない〟ことを理解し〝戦える範囲〟がわかる。だから他の方の作品に対して「この分野は私のフィールドではないから」と割り切って素直に楽しむことが出来るようになってきました。運動神経良くなりたい! と暴れていたけど、私は陸上が得意だったらしい。ダンス? リズム感が死んでるからそれはダンサーさんに任せるね。え? あの人は陸上もダンスもできる? ウ~~~~! 嫉妬! (ふりだしに戻る)
 でも、わけもわからず暴れていた時よりはずっとマシです。割り切って陸上を高めるか、ダンスもやってみるか。考えて選択することが出来ますから。


 一番の対処は、文字書きに興味を無くすこと。そうすれば自ずと化け物は消えます。でも、私たちにはそんなことは出来ません。それに多分この性質の人は、きっとまたどこか別の場所で化け物とエンカウントしてしまうと思うんです。
 できることは「諦める」「見える景色を信じる」「自己認識を高める」こと。
 お互い、頑張っていきましょうね。

 ちなみに、プロの分野で奮闘されている方と話すと、化け物を抱えている方、結構います。
ある分野のプロの人にこの記事について、「今日こういう回答載せるよ」と話したら「相談がくるの!? 嫉妬!」と言われました。ちゃんちゃん。

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