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人生

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人生について徒然なることを徒然なるままに書いています。
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#読書

「ページターナー」小説『PACHINKO(パチンコ)』の魅力

■「そんなに有名だったとは・・・」久々に「まとまった感想を書き留めておきたい」という本に出会った。「まとまった文章を書きたい」と思っていた頃に、ちょうどこの本に出会い、突き動かされたとも言えるかもしれない。 それは、2017年2月に原作が刊行され、2020年に日本版が刊行された『パチンコ』という小説だ。アメリカでは100万部を突破し、オバマ前大統領の推薦もある。原著のAmazonレビュー評価は13,700件を超え、平均評価は★4.6。柳美里さんが『JR上野駅公園口』で受賞し

失う寂しさ、出会えた喜び

出会うはずのなかった本。 そしてきっと出会うべくして出会った本。 『昨夜のカレー、明日のパン』は私にとって、そしてこれを偶然読んでいるあなたにとってそんな本かもしれない。 …とここまで書いてキーボードを打つ手を止めた時、かけっぱなしにしていたBGMがディズニー映画『リメンバー・ミー』の主題歌に切り替わった。出来過ぎている。どちらも逝ってしまった人を想いながら生きる人を描いた作品だから。 ♪リメンバー・ミー  忘れはしない  リメンバー・ミー  夢の中で  離れていてもい

時代を超えて「いいもの」が遺る理由−外山滋比古さんの訃報に寄せて

考えるのは面倒なことと思っている人が多いが、見方によってはこれほど、ぜいたくな楽しみはないのかもしれない。 −『思考の整理学』あとがきより。 1.本棚にあった著者の生きた証 『思考の整理学』(1983)を著した外山滋比古さんが96歳でお亡くなりになりました。 この本のタイトルを一度は聞いたことのある方も、または実際に手に取ってみた方も多いのではないでしょうか。 訃報を聞き、私はすぐに本棚にあった『思考の整理学』を手に取りました。著者の外山さんの不在を実感できないままに

何度でも、また出会いたい

10代の頃、とてもすきで繰り返し読んでいた本がある。菅浩江著『永遠の森 博物館惑星』。(今見たら、Kindle版は660円だった…!) 全世界の芸術品が収められた衛星軌道上の巨大博物館〈アフロディーテ〉。そこでは、データベース・コンピュータに直接接続した学芸員たちが、日々搬入されるいわく付きの物品に対処するなかで、芸術にこめられた人びとの想いに触れていた。切なさの名手が描く美をめぐる9つの物語。 昔から美術やファンタジーがすきだったわたしにとってツボすぎるこの作品。あちこ

自家製処方箋のすゝめ

だいすきな本がある。梨木香歩著『不思議な羅針盤』。小説『西の魔女が死んだ』で有名な梨木さんのエッセイ。 年を重ねるに連れ、エッセイを好んで読むようになった。エッセイのすきなところは、ノンフィクションなところ。それでいて、フィクションのようなところ。数ページにすっきりまとまっているシンプルさもすき。 思えば、『源氏物語』より、『枕草子』がすきな高校生だった。 『不思議な羅針盤』で一環して描かれているのは、人や世界との距離感の話。各エッセイのタイトルもこんなふう。 「近づ

「一万円選書」当選物語:#3『昨夜のカレー、明日のパン』

 私が「一万円選書」に当選するまでとその後、選んでいただいた10冊の本について紹介していくシリーズ物note。今までのnoteはマガジンにまとめていますのでよろしければどうぞ。 ***   3冊目は木皿泉著『昨夜のカレー、明日のパン』。2014年、本屋大賞第2位。NHKでドラマ化もされています。ドラマの出演陣も豪華。仲里依紗、星野源、鹿賀丈史などなど。  ちなみに「木皿泉」というのは夫・和泉勉、妻・鹿年季子による夫婦脚本家の名前だそう。夫婦で何か一緒に作品を作るって、い