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社会人大学人見知り学部卒業見込みを読み丸【読書感想文】

『社会人大学人見知り学部卒業見込み 完全版/若林正恭』を読みました。芸人さんの書く随筆って本当に達観しつつ拗らせていて面白い。

オードリー若林さんの、(今現在の)印象そのままだな〜!!!という本だった。
真面目で卑屈で、わかってんだけどわかってない、押し引きでしか社会に居られない、素を出せない恥ずかしがり屋。

まず社会に出るのが限りなく遅く感じた若林さんだからこそ書けるテーマ性に、エッセイ好きなら必ずヒットするほど(世間知らずという面が)シンパシーに訴えかけてくる。

純文学や自己啓発や新書を読むらしい若林さんの「でも自分の性格は変わらない」という嗜好がモロに写し出された一冊だった。

ネガティブモンスター(温泉の回)でいうネガティブ思考から逃れる方法が「没頭」だという。頷けるものがあった。父親が偶然全く同じことを言っていたのを耳にしたことがあり、もはや他人事には思えない対処法だった。

岡本太郎さんと二律背反への想いも、とにかくアツかった。自己のズレを徹底的に受容できないまま過ごした若林さんの、むせ返るような柔らかい憎悪が載せられている。

元々強くて周りを気にしなくて自分に満足している人は、病的に他人に憧れるようなことはない。

323p 「二律背反」 社会人大学人見知り学部卒業見込み
完全版/若林正恭

自分に言われたようでウッと刺さった。その通りだから。きっと認められたくてしゃーないからこそ、憧れるし表現をしたがるのだ。

ディヴ(分人)の考え方もよかった。キャラ分けより自然で素直な考え方だと思う。結構本気で多様な価値観を知ろうとした人の想いだし、卑屈と優しさは近いところにあるな、と若林さんのエッセイを読んでいるとよく思う。

(精神的に追われつつあった)タイミング的に救われたのは「牡蠣の一生」の回だ。

「いいかい。この世に存在する理由には二つあって。一つは何かをしているから存在していいということ。例えば会社にいてちゃんと働いているからその会社にいていいと思えるみたいなこと。二つ目は生まれてきたら、なんの理由も無くこの世界に存在していいということ。(後略)」

250p 社会人大学人見知り学部卒業見込み
完全版/若林正恭

せやな。せやねん。時たま忘れるけども。

慣れは強い。
成長や主義よりも全然早くて強い。

あとがき 348p 社会人大学人見知り学部卒業見込み
完全版/若林正恭

あとこれ。社会って慣れの塊だと僕も一方的に思っている。
30代に入った頃であろう若林さんがこれをあとがきに添えているのが、(20代前半の僕としては)たまらなく希望的観測として響いた。

とにかく全体的に「面白く考える人の、バレている苦悩」の上手すぎる言語化という感じ。時折、心が吸い寄せられるのを感じながら共感して読んでいた。

変えるのがとても難しい「性格・人柄」というアイデンティティの、そういう人の社会との上手な付き合い方の見本として、読んで良かったな〜と思えるエッセイ集だった。本棚にずっと置いときたいな。

こなまるでした。

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