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車輪

ストッパーがかけられた台車というのは
当たり前であるが押しづらい
無理矢理前に力技で押すこともできるが
やはり進みづらい
上に重い荷物が積んであるのならば
尚、力を要求される

ブレーキがかけられていることも知らずに
それでも前へ進もうとする
斜めに方向が逸れようとも
それでも前へ
目の前の蝶を追いかけて

何もしないよりはましだろうと
タイヤを擦り減らしながら
汗が頬を撫でるのも気にせず
ただただ前へ
前だと思い込んでいる方へ
彼方の泉を思い描いて

さすがにもう疲れただろう
ストッパーの存在に気付いたのではないだろうか
取り外してみたらどうだろう
どうだするすると前に進むのではないだろうか

少し後ろを確認すると
前に進むことにばかり水を注いでいたから
荷物が彼方此方に落ちている
目下、大切な贈り物を回収中
道はまだ半ば
いや、ここはスタート地点か
今までただスタートラインの前で
円を描いていただけのよう
先程まで隣で遊んでいた蝶は
少し先を舞いながらこちらを気にしている

籠は台車の上にあるだろうか
あの蝶もこの籠に収まることを望んでいるのなら
迎えに行かなくては
一歩ずつでも着実に
ストッパーはもう外れた

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