古巣

昨日は、とある演奏会に行った。自分の卒団した大学オケの定期演奏会である。サントリーホールでローマの謝肉祭、海、オルガン付きである。
現役生による演奏は、とても聞き応えがあり、特に海は、その精緻なアンサンブルに聞き惚れた。ドイツものが得意だというオケだが、今はフランスものも仕上げられるのかと驚嘆した。オルガン付きは、自分の卒団公演でもサントリーホールで演奏した曲である。オルガンの響きや、曲の最後へ向かう勢い、聴衆の高揚感含めて、この曲は、やはり、このホールで演奏するのがとても合う曲だと感じた。前中もそれぞれ、四年生でのサマコンと一年生での定演で演奏した曲たちだったため、どれも思い出とともに聞くことができて、感慨深いプログラムだった。
そして今回は、ビオラパートの同期に声をかけて一緒に演奏会を聴いた。同期は、我関せずのような人ばかりのため、本当なら一緒に演奏会に行くなどあり得ない。しかし、今回はプログラムが良かったのと、在団中のバイオリンパートの子から誘われたために、誰かと聴きに行きたいと思って同期に声をかけた。自分のパート同期は四人。前回四人が集まったのは、サントリーホールでの卒団公演だった。四人のうち二人が同じオーケストラに乗るなどといった機会はあれど、四人が一堂に集まったのは四年ぶりである。今回の演奏について話したり、お互いに今どこに住んでるとか何をしてるとか、そんな話をしたり、ホールから出てくる現役生にお疲れ様って言ったり。話していると、全員どこかのオーケストラでまだビオラを弾いていた。細々とでもパート同期がみんなビオラを続けている。何となく嬉しくなった。
昔、特に大学生の時に時間や空間を共有して同じ音楽を奏でた仲間と時々会って話すというのは、新鮮さと懐かしさが共存して、不思議な気分になる。次に集まるのはまた四年後にしよう、僕が医学部を卒業して医者になった時にしようという話をして別れた。
演奏会後は先輩と飲みに行った。これだけ飲みらしい飲みをするのは、コロナ禍では初めてだった。ジョッキ5杯ほど飲んだのも久しぶりだった。どうすれば現役生からオーケストラメンバーをリクルートできるかとか、仕事の話もたくさんした。ジョッキを飲む時には、雲竜型と不知火型があるというのも初めて教わった。酔っていたら、本番が一つ増えていた。こんな生活、楽しすぎるなあ。

ライフステージは移っていくけれど、このオケという共通項に帰ってくると好きでいられる。やっぱり感情の整理はつかないし、つけるつもりもないけれど、夢のような環境で、夢のような人たちと、同じ時空を共有している。お前でも何とかついていけてるぞって二十歳の自分に伝えたい。

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