自分の幽霊
20代半ばで鬱病になり、入院した
その時の理由も人間関係だった
何もかもがどうでもよくなったが、でも死にたくはなかった
オセロの駒を一つ返すだけで、盤上の色がざらっと変わるように
全てをひっくり返したい
私は勝ちたかった
自分を否定する全てに
退院後主治医が止めるのも聞かずに、転職して東京へ出た
今考えたらかなり無茶な話である
まあなかなかに地獄のような転職当初だったが、気が付いたら持ち直していた
持ち直した状態で結婚し、出産し、引越しをして子育てをし、今に至っている
この選択で良かったと心の底から思っているが、持ち直す前に喉から手が出るほど欲しかった「全てをひっくり返して勝ちたい」という望みは果たせていない、と私は思っていたようだ
だから、結婚・出産・子育て以外のところで、それを成そうとしていたように思う
過去の出来事を帳消しにするような自分になり全てに勝って見返す、それが目的だったように思う
つまりは、それを成そうと考える限り、どこまでいっても過去の影響から逃れられない、ということだ
起点が過去なんだもの
過去の出来事やそれに関わる怨敵に勝とうとしているんだもの
もう関わりもない人なのに
それって、幽霊を相手に闘ってるのと一緒なんじゃないのか
人間関係なんて、相性だし、人の考えてることなんか一生わからないし、みんな見てる世界は違うし、それでもお互いがお互いを思い合える場合も時々ある、というだけのことだ
上手くいかない場合は、それだけのご縁だったということ
なのに私は、終わったそれに「負けた」と思い執着して、終わった後になって「絶対勝ってやる」と闘いを挑んでたのと同じ
もう相手はそこにはいないよ
自分の中にある、過去の相手の嫌な言動を増幅させて、暗い部屋の中でエンドレス再生してるみたいな
どんなプロジェクションマッピングだよ
最悪だ
何やってたんだ、私
「私の中にある過去の辛い記憶」ってのは、私の中にあるものでしかなく、おそらく事実とは異なる
私の視点や感情や解釈が入っているから
ということは、私がずっと見てきたその最悪のプロジェクションマッピングは、私の暗部の再生でしかない
私が見て、怖がって、勝ちたくて、闘いを挑んでいたのは
自分の幽霊じゃないか
ならば、ちっとも怖くなんかない
お疲れ様
もうおしまいにしよう
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