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航空機事故から学ぶ:ラダーのこむら返り

ユナイテッド航空585便墜落事故:1991年3月3日、United 585便(B737-200型機)は米国CO州Denver空港からColorado Spring空港へ向けて17分の短いフライトへ9:51amに出発した。操縦士の男女は双方ともペテラン操縦士で、管制官より目的地の風向風速が320°/G29ktで、地上150ftで機速50kt低下、120ftで15kt上昇、そして45ftで20kt上昇とwindshear様に変化していることを通報した。同機は降下するにつれ機速が増して、機長はflap30°を命じたが、地上300mで突然右rollしてspinに入り、副操縦士はflap15°に戻すも370km/hrで地上に激突した。

NTSBの他FBIや救世軍が救助と捜索に当たったが、乗員5名と乗客20名の全員が死亡した。調査官らはblackbox、計器類、rudderの残骸をcheckしたが異常は見当たらず、唯一rudderのPCUにあるdualサーボが固着した可能性だけが残された。地上にいた目撃者は乗っていたピックアップトラックが揺すられる程の強風であったが、Rockey山脈からの山岳波によるwind rotorが事故原因とは考えられなかった。CVR中のCRMはexcellentと評価された。事故から21か月後に、NTSBは事故原因はundeterminedとして調査を打ち切った。

USエア427便墜落事故:1994年9月8日、US Air 427便(B737-300型機)は、米国イリノイ州Chicago空港からフロリダ州 West Palmbeach空港へ飛行していた.同機はDL1083便(B727型機)の後方を飛行していて、その後方乱気流に晒されていた。突然左へrollしてspinに入り、機長はPTTスイッチを押しながら操縦桿を引けと指示していたが、19:03に264ktの高速で地上へ激突した。乗員5名と乗客127名が亡くなったが、遺体が数千もの断片となったため、航空機事故調査史上初めてbiohazard suitsを着用して作業が行われた。

現地調査にはUS Airの操縦士組合から同僚のパイロットが調査に参加した。NTSBの調査官らはUA585便事故と対比させて調査し、機体尾部とrudderは損傷がなかったことを確認して、PCUを製造元のParker Hanewell社へ送付した。PCU内部の油には細かな金属製tipsが混入していたが、フィルターが付いているので問題ないとされた。本件もhardover rudderが疑われたが、結論が出なかった。

イーストウィンド航空517便急傾斜事故:1996年6月9日、Eastwind航空517便(B727-200型機)は、米国ニュージャージー州Trenton-Mercer空港からバージニア州Richmond空港へ乗員5名と乗客48名を乗せて飛行していた。高度4,000ftでrudderペダルが動かなくなり、機体が右rollした。補助翼を左へ切って機体は水平に戻ったが、チェックリストを確認中に再び右rollに陥って、副操縦士はMaydayを宣言。Richmond空港へ緊急着陸した。
3件目の事故は墜落を免れたため、FAAとNTSBは機長らから事態の聴取を行った後、PCUが正常であったことを確認した。調査官らはthermoshockテストという-40℃の上空の冷気に置かれたPCUへ熱い油圧オイルを流すという「拷問のような試験」を実施してみた。するとPCUはjammedを起こして、その後破損は全くなかった。

しかし、それが墜落につながるかという疑問が残ったが、Boeing社内部での追試で、rudder reversalという逆操作となる事があるのが確認された。つまりrudderに対して適正な操作を加えると、状況が悪化することが分かった。
Boeing社は1億ドルかけて、1つのサーボに2つの弁があるdualサーボ型PCUを世界中にある現役のB737型機について取り換えを行い、その後同様な事故は発生していない。

DC-10型機のCargoドア、B-737型機のRudderは悲劇的な墜落事故を何回か経験して、初めて事故原因が改善された重大事案です。稀にしか起こらない事象だから、世界中を飛んでいる同型機の運航を止める訳には行かなかったのは理解できますが、事故で犠牲となった遺族の無念は幾らばかりでしょう。

NTSBの調査官は上空の動作環境を熟慮した再現実験を行って、初めて事故の再現に成功しています。この徹底した姿勢には敬意を表しますが、こういう動作試験は製造元が本来行っておくべきではありませんか?またBoeing社はこの危険性を、実は薄々気づいていたのです。方向舵が逆の振舞いをするなんて、エアマンは想像だにしません。FAAの型式認証の在り方にも疑問を呈したと思います。FAA certification=世界の認証になりますから。

hardover rudderの原因はrudder PCUの構造上の問題と結論して問題ないのか?未だに疑問視する声もあります。2002年10月にデトロイト発成田行きのNWA85便、B747型機のlower rudderがAleutian列島上空で固着して、乗員の懸命な操縦でAnchorage空港へ何とか緊急着陸できた重大事故も起こっています。旅客機のrudderシステムには未だ万全の信頼が置けないのではないか?と懸念しています。

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