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航空機事故から学ぶ:チンチンの足を収納して

CanadaのMontrealに本拠地をおくNation Air社はCharter専門の航空会社で、同社のDC-8型機(C-GMXQ)を使用して1991年7月11日に、NigeriaからのMecca巡礼者をSaudi ArabiaのJeddah空港からNigeria北部のSokoto空港へ帰国させるFlightに就いた。

機長、副操縦士、航空機関士の3人態勢で8:26amに30℃に達する暑さのなか離陸を開始した。離陸滑走中にBangという音がしたが、航空機関士は計器に異常がないというので、8:29amに離陸した。1,500ftまで上昇したところで油圧が低下し、管制官の指示で2,000ftで水平飛行に移った。

丁度同じタンミングで別のSaudi航空738便が油圧系統の低圧を管制に報告しており、同機は3,000ftへ降下するよう管制より指示されていた。Nation Air2021便はJeddah空港への引き返しをATCへ要請したが、管制官はNation機とSaudi機を混同してしまい、高度や方位が正しく指示出来ていなかった。

その間、客室内には煙が立ち込め始め、同乗の整備士は客室乗務員に促されてギャレーやトイレなどを見て回ったが、火元が分からなかった。その後機内の煙は濃くなり、中央部の床下から火の手が上がり、乗客はパニック状態となって前方へ移動し、非常口を開けようとして制止されたりと大混乱に陥った。

機長はEmergencyを宣言し、RWY34Lへ戻ろうとするが、機体制御が難しくなってきた。滑走路の手前11SMから機体は火焔で部品や乗客が落下し始めて、10SM手前で1,700ftまで降下してGear-downしたが、機体全体が炎に包まれて、RWY34C手前の砂漠に墜落した。乗客247名と乗員14名の合計261名全員が死亡した。

Canadaの運輸安全局(TSB)の調査官らは、まず火元の特定を試み、機体中央部と推測した。離陸した滑走路から破裂したタイヤ片が見つかったことから、Nation Air本社は滑走路上の異物を踏んでタイヤがバーストしたと公表した。しかし調査官らは左車輪のリムが地面と擦れて一部平らに削れていたことや、離陸前に計測したタイヤ圧の数値に一部改ざんした跡が認められたため、BlackboxをCanadaへ送付して精査することとした。

CVRを解析すると、副操縦士が滑走中にタイヤがパンクしたか?と感じた言葉が残されていたことや、僅か10分間で機体が火に包まれる?という疑問が生じた。更に整備士へ聞き取りを進めたところ、事故前にGhanaでタイヤ交換したものの圧が低かったが、本社が遅延を恐れて交換中止を指示していたことが分かった。

またJeddah空港離陸前に、事故機へ同乗した整備士が窒素のタイヤ充填を試みたが、入手できず断念していたことも分かった。Crewにはこの事は報告されず、7回も同様な状態で離着陸していたことも判明した。Jeddah空港では発進から離陸までに5km滑走しており、タイヤが熱くなってパンクし易い状態にあった。パンク後に地面と擦れてチンチンに発熱したタイヤリムをGear-upして収納したため、火災が機体全体に急速に広がったと考えられた。

DC-8型機には火災アラームが充実しておらず、TSBは低圧タイヤの使用禁止とGearへ火災・煙・温度センサーと警報システムを装備するよう勧告した。Nation Air社は1993年に倒産して、運航を終えた。

イスラム教徒のMecca巡礼(Hajji)は、多くの人たちにとって一生一度の大旅行ですから、例年それに合わせたcharter便が世界中からJeddah空港へ集まります。運航予定時刻に合わせないと空港は大混乱になるのでしょうが、それを理由にタイヤ整備を7回も行わなかったのは頂けない。しかも会社側はその事実を隠して、滑走路上の異物で事故になったとクレームしたのは悪意を感じます。

それにしても、管制塔にいた管制官は、離陸時の出火の様子を見ていなかったのでしょうか?多数の航空機を裁くのが精いっぱいで、砂漠に墜落するまで事態が掴めなかったのは残念でした。事故機に同乗して死亡した整備士は不正タイヤの秘密を知っていたのだから、火災の火元を心中分かっていたのでしょうか?

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