【読書備忘録】ダスクランズからクトゥルーの呼び声まで
ダスクランズ
*人文書院(2017)
*ジョン・マックスウェル・クッツェー(著)
*くぼたのぞみ(訳)
J・M・クッツェーは南アフリカやヨーロッパと植民地の歴史を掘りさげ、言語や人種に関わる諸問題を端正な文体で綴ることで知られている。強靱な意志と広範な知識から織りなされる作風。その文化の重みを語る壮大な物語は独自の寓意性に富み、華々しい開拓の裏に隠された残酷な、血生臭い差別と排除の歴史が精密機械のような筆致で展開されている。三十代目前のクッツェーが借家の半地下で筆を起こした