その物語、内から見るか?外から見るか?

以前マリナ油森さんが『そういえば偶像に恋したことがない』というnoteを書かれていました。

ざっくり書けば、俳優やアーティストに恋心を抱いたことがあるかどうか、というお話。三次元じゃだけじゃなく二次元だって良いのだろうと思います。
みなさんは、恋したことありますか?


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小さい頃から母によくこんな話を振られました。

「この世の中から男性が全員消えたとします」
「うん」
「のび太、スネ夫、ジャイアンしか残りません」
「…うん」
「誰かと結婚しなくちゃいけないとき、」
「3人の中から選ぶの?」
「そう、その中から誰を選ぶ?」

わたしと妹と一緒になって母自身も誰を選ぶのか考えます。そして自分が選んだ相手についてどうしてその人を選んだのかお互いに説明し合うのです。

「ハリーポッターの世界だったら?」
「NARUTOだったら?」
「ピン芸人さんだったら?」
「スラムダンクだったら?」
「ロバートだったら?」

毎晩のように二段ベッドの上と下で話しました。
先日のマリナさんとのやり取りの中でこれって一般的じゃなかったのか、と驚いたほどにわたしの日常に当たり前のように存在していた会話です。

日常的にこういう会話をしていたからか何か作品を見る時に必ずと言っていいほど「推し」を探してしまいます。きっと無意識のうちに染み付いた行動です。


だからなのかな、偶像に対してわたしは軽率に恋をすることができます。おそらく現実の恋とは違う。けれど、偶像へは偶像への恋があるんだと思います。

逆に現実世界ではなかなか恋にまで発展しません。
母も同じなのか「自分のことを好きになってくれるひとにしか恋なんてしない」なんて明言していました。

現実の恋は"付き合えるかどうか"で考えている部分があるからかもしれないですね。だからなかなか恋にまで発展しないのかなあ、と。たぶんそこが偶像の恋とのいちばんの違いなんだろうなと思います。
付き合える云々を抜かして「好き!付き合いたい!」と言えるのが、わたしにとっての偶像の恋なのかもしれません。だから軽率に恋が出来ちゃう。


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偶像に対して軽率に恋をするなんて書いたけれど、その場合のわたしはその作品の中に入り込んだわたしなんですよね。
いわゆる妄想になると思うのですが、その部分がそもそも作品の見方によって変わってくるんじゃないのかなと思うんです。



先日、恋人と『ハイキュー!!』というバレーボール漫画に出てくる、烏野高校の排球部3年生、スガさん(菅原孝支)について話していた時のこと。

画像1

(センターの目元にほくろのある爽やかなひとがスガさん、左の髭が旭さん)


「旭さん(同じく3年生)が部活に戻ってくるようになって、スガさんは変わったよね。スガさんは自分から積極的に周りに相談しないタイプだからさ、誰にも言わずに"自分のせいで"ってすごく抱え込んでたんだろうし…だから旭さんが戻ってきてからのスガさんって、前と比べて吹っ切れているというか、生き生きとしてるよね。きっとすごくホッとしたんだと思うの。自分がもっとこうしていれば、なんて責任を感じていただろうから」

「うーん…分からない

「え?」

「いや、だってそんな描写ないじゃん


わたしの話に彼はハッキリ「分からない」と言いました。
そしてその理由を説明してくれたのです。


「たぶん、こむぎは作品を観る時にその作品の箱庭の中に入って観てると思うんだよね。俺は違う。俺は箱庭の外から観てる」


スガさんの話で言えば「俺はあいつ(旭)に頼りすぎた」という台詞はあるものの、誰にも言わずに一人で抱え込んでいたという描写は確かに無いんですよね。
恋人は描かれている世界の話をそのまま観ているわけです。描かれていない部分の正解は分からないよ、と。

一方でわたしは描かれていない部分の世界を自分で生み出しながら観ているんだと思うんです。外からではなく内側から。ハイキューで言えば、わたしは無意識のうちに烏野高校の生徒になっていたり、音駒高校の生徒になっていたりするんです。その生徒目線で作品を追っている。というよりも一緒になって過ごしている。
そうか、わたしがホラー映画やパニック映画が苦手なのは(単に怖がりというのもあるんだろうけど…)内側に入り込みすぎてしまうからなのかもしれないですね。


好きなキャラクターが家に帰ってお母さんのことを「お母さん」と呼ぶのか、それとも「母さん」なのか「母ちゃん」なのかとか考えちゃうけれど、これって内側に入り込んでいるからなのかしら。
好きなキャラクターの家族構成とか考えませんか?わたしはすぐ考えてしまいます。お姉ちゃんから可愛がられてたら良いなあ、とか。
えっと、これ、一般的じゃないのかなあ。


つまり、物語を見るときにその作品の内側から観るひとと外側から観るひとで偶像に恋しやすいのかどうかも分かれるのではないか、という大麦論。

そもそも家族構成にまで想いを馳せている時点でやっぱりこれって恋なんじゃないの?なんて。

今回はマンガ作品を例にとったけれど、3次元でも同じで。ドラマの役に偶像の恋をすることだってあるし、文章に恋をすることだってある。



とにかくいまはスガさんに夢中です、ということで。


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