あなたの帰りを今日も【 #言葉を宿したモノたち 】
「今日も一日お疲れさまでした」
ぼくの元にやってきたあなたは目を閉じて俯く。
あなたはぼくより小さくて、
必然的に見下ろす形になってしまう。
すみません。
でもこればかりはどうしようもなくて。
「今日はちょっと遅かったですね」
あなたは頑張りすぎるところがあるから心配です。
視線は合わなくても毎晩見ているから分かります。
たまに『…冷たい』と、ぼくを遠ざけますね。
決して意地悪をしているわけじゃありません。
…疑うんですか?本当ですよ。
大丈夫。もう冷たくないでしょう?
「…何か、あったんですか」
珍しく視線が合ったと思えばいつもより眼が赤い。
ああ、きっと何か嫌なことがあったんですね。
ぼくはあなたのいろんな顔を見てきた。
だから知っているんです。
ぼくの元に来るあなたより
ぼくの元から去るあなたの方が
いつだってすこしスッキリした顔をするってこと。
ぼくの前ではいくらでも泣いて良いんです。
嫌なことはぜんぶ水に流してしまいましょう。
「今日も一日お疲れさまでした」
ぼくの声はあなたに聴こえているでしょうか。
いえ、聴こえていなくても良いんです。
いつだってぼくはあなたの味方なんだって
それだけ知っていてもらえれば。
あ、すみません。
やっぱりもうひとつだけ良いでしょうか。
ぼくが誰なのか、あなたなら分かってくれますね?
仲さんによる、身の回りのモノを擬人化する企画『言葉を宿したモノたち』に参加させていただきました。
ぬいぐるみやデジカメなど身の回りのモノに名前をつけがちなので、(小学生の頃は近所の木に「長老」って名前をつけて毎朝拝んでいました。ファンタジーガール!)それぞれのモノが何を考えているのかを言語化するこの企画は、わたしの普段の頭の中をさらけ出すのに近い感覚です。面白かったなあ。
さて、「ぼく」はだーれだ?
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