分娩事故って??

こんにちは。

みなさん、いままでに死にかけたことはありますか?

私はあります。
その時のことをお話ししようと思います。

と、言っても、別に特別なエピソードがあるわけではありません。
実は、みんな、持っている経験の話です。

人はいろんな時に死にかけます。高熱が出た時?喉にものが詰まりかけた時?貧血でぶっ倒れた時?

人が機能を止められて1番初めにやばくなるものは、呼吸、です。止められたら数分と持たずにあっちの世界に行ってしまいます。
しかし、呼吸ってどうやってやるのか?誰かに教えてもらったことないですよね。

生まれてすぐ息ができなかったら、生きていけません。

実は、第1啼泣(おぎゃーってやつ)、なんで起こるか分かってないんです。
なんか赤ちゃんを、ゴシゴシ刺激したり、無理やり肺に空気を入れてあげるとどうやら泣くらしい、と言われている程度の話なんですね。

そして、分娩の途中も危険。
お腹の中では臍の緒から酸素をもらっていますが、これが途切れたらやばいのは赤ちゃんも一緒。分娩途中で臍の緒からの酸素が少なくなることもしばしばあるし、陣痛でぎゅうぎゅうにされてストレス状態になることもあるし、ストレスが溜まり過ぎると生まれた時に息ができないこともあるんですね。

これはもう、いっぺん死にかけてるのと同じです。

さらには胎児循環といって、大人と赤ちゃんは大きな血管の中の血液の流れが違うんですね。生まれた瞬間に、切り替わる。うまく切り替わらないと、これも死にかけてしまう、原因。

どういうことかと言いますと、
生まれるのはほんまのほんまに奇跡だし、いっぺん死にかけて生まれてくるんです、みんな。学生の時に、生まれる時に1番危険な道を通ってるんだよ、みんな、と教わりました。

分娩事故の判例を見てて、吸引分娩何回もやったとか、鉗子分娩が悪かったとか、帝王切開が遅れたとか、いろいろ考察されてるんですが。さらに損害賠償何千万と出てることもあるんですが。

詳細はわからないですけど、赤ちゃんのこと母体のことどうでもいいと思っているなら放置すればいいわけで、なんとかしようと情熱を持って、吸引とかするんですよ。苦しそうだから、出てこい!って。

いろいろな複合的な状況の中で、すぐには帝王切開できない病院もあるので、できることのなかから、選択するんですよ。

毎日頑張ってはいますが、もし将来何かあって訴えられたら、もう気持ち的に産婦人科やれなくなるだろうな、と。悲しい気持ちになりました。

分娩は奇跡です。
産婦人科医は奇跡にタダノリさせてもらってる幸せな仕事です。いつも、パワーを貰います。

奇跡はたまに、起こらないことがあります。
私たちにできることは多くないけれど、今日も目の前の人たちに怖いことが起こらないように祈りながら精進するのみですね。

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