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てのひら小説集

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本当に短くて、小説の種のようなお話たちです。どこかで必死に生きている誰かの人生の一瞬を切り取って書いたつもりの掌編小説集です。
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掌編小説「愛をおしえて」

   五日前に別れたはずの男に睨み付けられて美優は戸惑う。 「もう男がいるって本当かよ」  聞かれて正直に頷く。別れた次の日に今の彼と付き合い始めた。 「もう、したのかよ」  男の言葉に美優は首を傾げる。 「寝たのかって聞いてんだよ」  美優はびっくりしながら頷く。  つきあい始めたその日のうちに抱き合った。 「やっぱりお前は誰でもいいんだな」  睨み付けている目が少し濡れているように見えた。 「俺を愛してたわけじゃない。試してみて正解だったよ」  男はつぶやくようにそう言う