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読書note

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本を読んで思ったこと、感じたこと、考えたこと、勝手な考察などを書いた記事を少しずつアップしてます。読んでよかった!と思う本のことだけ書いてます。
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記事一覧

柴崎友香「パノララ」を読んで

思いを言葉にするのは困難で言葉にしても届くとは限らず届いても心の内をそのまま解ってもらうのは不可能に近い。 人は自分の願うように変わってはくれない。 同じ時間同じ場所にいても全景が一望できる本当のパノラマではなく少しずつズレてるパノララ(マ)写真のようにしか見ることはできない。 見ている光景は皆違う。 同じ日を繰り返すことで見えた少し違う光景は誰かが見ていたものかもしれない。 それほどに解り合えない絶望。 それでも言葉にして自分自身が変わるしかない。 それで少し世界も変わる。

伊坂幸太郎「フーガはユーガ」を読んで

数々の伏線を回収する鮮やかさは相変わらず。どうでもいい会話や出来事は一つもない。 軽やかにすら聞こえる語りで紡がれるのは弱者が理不尽に虐げられる世界。作者はこの世から悪意や罪や理不尽がなくならないこと、勧善懲悪が通用しないことを知っている。 小説的能力があっても都合のよすぎる大団円はない。それでもユーガとフーガはただできることをするのだ。そこに作者のどうにもならないことへの姿勢を感じる。 最後は風我の中に優我はいると思わせる描き方で微かな救いを与えてくれる。 やりきれ

ミランダ・ジュライ「最初の悪い男」を読んで

*内容に触れています 赤裸々であけすけな表現が苦手で、最初は主人公のシェリルにも共感できなかった。孤独ながらも自己完結した秩序ある生活の中で妄想と共生していたシェリル。若く自堕落で身勝手なクリーがやってきてカオスとなった暮らし。敵同士だった二人がフィクションに入り込むようなゲームを通して共犯者となり何かが生まれたはずが、シェリルの暴走した妄想の中でクリーを女というモノとして扱っていたことがわかり決裂。 「奇妙」で「痛い」女たちの様子に「ないでしょ」と思いつつ居たたまれず目