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季節労働アルバイト、11日/80日を終えて(2454字)


1日休みをもらって、昨夜からwifiの使える自宅に戻っている。
収穫アルバイトの朝は少し早く、そのリズムが早くも体に刻まれたのか、休日の今日も6時に目が覚めた。

ベランダでぼーっとしていたら何か書きたくなって、少し久しぶりにPCでnoteを開いている。寮に運ばずに自宅においていた、ふるい方のPCはキートップがひとつだけ外れていて、半角のスラッシュが出せないのが悔しい。




好きな果物の収穫アルバイトをネットで見つけて、9月上旬から奈良県のやや南部にある市で住み込みで働いている。山のなかにある寮の部屋はwifiもスマホの電波も届かなくて、毎日原付で電波の届く市街地に買出しにいくついでに、1日の記録をSNSに140字でつぶやくようにしている。今日は家でネットが使える贅沢時間を過ごせるので、思う存分noteにつづってみよう。

何を書くかも、オチも決めずにキーボードをたたいている。

11日外で働いただけで真っ黒になり3キロ痩せた、ひじから先の全てが筋肉痛になったようなからだで、キーボードをたたいている。



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農家の仕事は、まったくなじみがなかったわけではなくて、数年前に農作業のボランティアをしたことはあったし、他にも農家さんとの縁もあった。

だけど1日中農業をすることがどれだけ体力を使うかは想像していなかったし、想像していたとしてもわからなかったと思う。初日は、あまりの疲労で寮に帰ってからシャワーも浴びずに1時間寝込んでしまった。

まだまだ暑い日だったし、収穫作業に体がなれていない。1日目が一番きついんだなと、あとで知った。収穫しやすいように隣の木どうしで枝を紐でつなぎ、上に枝が伸びすぎないようにしている畑は、かがんで移動をしないと頭が枝にぶつかる。脚立や収穫物の入ったかごなどを持ってかがんで動くだけでも結構な体力がいるし、畑は斜面なのでゆるやかな上り下りもある。はさみで収穫物を切る作業も、なんども繰り返すと指が筋肉痛になる。

1日中草刈をすることもあるし、ビニルハウスの100×4メートルくらいのビニルをひっぱってはがしていく作業も、すごい力がいる。骨組みを上って移動するのは趣味のボルダリングで培ったからだの動きが生きるし、ビニルをひっぱるのは、ハンドボールを高校のころやっていたおかげでそれなりに腕力があって少しは助かったけど、それでも結構きつい。

体力的にはこれまで経験した仕事よりずっとハードなのだけど、山のなかにあるから毎日の畑への移動はツーリング気分で気持ちいいし、空気のきれいな外で働くのは性にあっているように感じている。

昼の1時間の休憩とべつで、午前と午後に15分の休憩があって毎回ペットボトルのジュースをいただくのだけど、体を動かしたあとの飲み物はすごくおいしい。

そして、5時きっかりで町内のチャイムがなって、すぐにあがらせてくれる。アフターファイブが毎日楽しめるおかげで、多少連勤が長引いても、そんなに憂鬱にならない。





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家族経営の農家さんは、繁忙期、用事がない限り毎日働いている。
それでも表情はいきいきしていて、バイトへのかかわり方も親切だ。
地方の農家さんたちは、労働とか、休むことの概念が、都市部とはずいぶん違うように感じる。

1週間前から同じ寮で暮らすことになった同居人のアルバイトの人はいろんな季節労働を経験してきたそうだけど、場所によっては40日休みなし、なんてこともあったらしい。

さすがにそういうのはやめてほしいけれど、労働基準法とか、最近ときどき目にする”週休3日”なんていう言葉とは縁遠い世界がたくさんあるんだろうなと思う。

果物が収穫期になっていて、収穫して出荷しないといけないっていう、ある意味わかりやすい需要がそこにあって、それをするために体を動かすというのはとても自然なことだ。たとえば介護とか育児をしている人たちも、用事がない限り他の人に代わってもらって休むことができない、ってことはあるわけで。

僕は学生の頃に過労死事件がニュースになって、”ブラックバイト”なんて言葉にも触れてきたから、休日はしっかりほしいし、それがない職場は変えていったり、離れたりしたほうがいいと思って生きてきたんだけど、価値観が少しゆらぐような、おもしろい経験をしている。


休日でも、家事なんかも含めたら毎日何かしらの仕事はするものだし、仕事中でもひといきつく時間はあって、家に帰ったら休みの時間はあるんだよな。


まあ、それでも、疲れたら数日休むということはあったほうがいいよなあとは思うんだけどね。

働く人には休みが必要だし、休んでる人には仕事が必要って、誰かが言っていたな。





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アフターファイブは毎日とても楽しい。



もともと田舎が好きで、都市部に住んでいても休日には緑の多い地域へドライブへ行くのが趣味だったんだけど、今すんでいるところは、家から10歩で絶景の星空が見えるし、5メートル走ればツーリング気分を味わえる。

毎日仕事を終えたらすぐに、「好きな地域で過ごせる自由時間」が手に入るわけだ。

電車で見かけるタワーマンションの広告に「都心まで○○分」なんて書いているけれど、田舎は、田舎まで0分だし、他の田舎の観光地にも原付や車があれば行きやすい。


原付で吉野川まで走って夕日を眺めてみたり、いくつかある地元のスーパーを物色したり、早めに仕事がおわったあとは近くの村までツーリングしたりする。


天川村へ向かう道路は突然県道が時々細くなって古民家が現れたり、レギュラー、ハイオク、軽油の注ぎ口が1つずつだけのちいさなGSがあったりしてえもかった。



ネットは繋がらない社員寮だけどテレビはつないでくれていて、毎日テレビのデータ放送でニュースや天気をチェックしている。

二層式洗濯機で洗濯をし、同居人とお酒を飲みながら喋ることもあるし、
持ってきたウクレレの練習をしたり、本を読んだりもしている。



ときどきいただく野菜をどう調理するのがおいしいか一緒に考えたり、渋柿をあえてそのまま食べてみたり、通り沿いのタイ料理屋にいってみたり、季節労働の話を聞かせてもらったりしている。


季節労働をしないとできない経験がたくさんあって、ネットの情報だけでは見えてこない、知らない世界が、この国には無数にあるんだろうなと思いながら、日々、生活をしている。



たまには遠くを眺めてぼーっとしようね。