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僕が県立図書情報館と出会ったころのことと、これからのこと。


「働き方研究」のインタビュー本


その図書館を知ったきっかけは、デンマーク留学中に出会った人が紹介してくれた本だった。「働き方研究家」の西村佳哲さんがいろんな人にインタビューしたものをまとめた、『自分の仕事を考える3日間』という3冊のシリーズ本だ。


デンマークの田舎にある大人のための学校、”フォルケホイスコーレ”で、物理的にも心理的にも日本社会と距離を置きながら、帰国してからの生き方(≒働き方)を考えていた僕たちにとって、人によって仕事観も人生観も全然違うことに気づかされるその本はとても興味深かった。

そんな『自分の仕事を考える3日間』の公開インタビューの舞台となったのが、奈良県立図書情報館だったのだ。


立派で充実したおもしろい図書館


たまたま帰国後に決まった就職先が奈良市内だった。まだ京都に住んで京都から奈良の職場に通っていたうちから、何度か図書情報館を訪れていた。

仕事後に、職場にあったおんぼろ自転車を借りて、あまりスムーズには進んでくれないその自転車をがんばってこいで図書情報館に向かった。夜8時まで開いているのがありがたかった。

大きな庭の奥に見える立派な建築の図書館に、かわいいのに知的な印象のロゴが入ったかっこいい看板。最初に訪れたときは本当に感動した。

図書情報館には図書カードがあれば自由に使えるパソコンがかなりの数あった。帰国してから数ヶ月がたっていたけれど、当時まだポケットwifiもスマホも契約していなかったから、友達とメッセージのやりとりをするのにもここのパソコンを使っていた。

館内はとても広くて、魅力的な本がたくさんあって、2階のエントランススペースの展示や3階の特集コーナーには毎回ワクワクさせられた。

沼地だったところにできたという、佐保川に面した大きな建物はかっこよくて、立地も良い。春は桜が咲くし、秋になると南側の庭の木々の紅葉もとても綺麗だ。

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奈良に引っ越すならこの図書館の近所にしようと思って物件を探したけれど、一人暮らし向けのアパートは見つからず、歩いて20分くらいのところのアパートに住むことにした。そのアパートから自転車で職場まで30~40分かかるけれど、行く途中に図書情報館があるから、仕事が昼からのときは朝図書館によってから出勤することができた。

本が好きなのに本と関わる時間がほとんどない仕事に就いた僕にとって、たくさんの魅力的な本のあるこの場所は、オアシスみたいだった。時間があるたびに図書館に行って貸し出し冊数の上限まで本を借りて、読んでは返してまた借りてを繰り返していた。

奈良に引越して三年がたち、奈良の魅力的な場所をたくさん知った今でも、奈良に遊びに来てくれた友達には必ずおすすめするスポットだ。

レシピ集を借りてきて家でベトナム料理を作ったり、館内のカフェで友人とモーニングを楽しんだり、仕事のガイドヘルプの休憩に使ったりもした。

語学の教材を何冊も借りたし、コーヒーの雑誌を借りて読んでいた時期もある。もちろん小説やエッセイもたくさん借りた。海外旅行に行く前に行き先の国の情報を集めるのにも使ったし、図書館が好きになりすぎて図書館関係の本を読み漁っていた時期もある。

新聞も読むけれど、新刊本コーナーや「新聞書評に取り上げられた本」コーナーは、twitterをしないしテレビもあまり見ないぼくにとって、最近話題のトピックを知るための場所だ。


図書館というセーフティネット


子どもの頃に親に連れられていくようになってから、図書館は安心できる居場所だった。家があまり安全じゃなかったときには避難場所になっていたし、ストレスで高校をサボって朝から家出をしたときに自転車で行ったのも、昔住んでた地域の図書館だった。

貧乏旅行をしていても、無料で休憩できて、しかもその土地の情報収集をするのに利用できる。ぼくはだいたい旅行をするときにその地域の図書館を調べる。図書館に行くために旅行をすることだってある。

(フィンランドの駅の近くのヘルシンキ中央図書館、”Central library Oodi”には、携帯の充電をしつつ寝そべっておやつを食べながら休憩できるようなスペースもあって素晴らしかった)


図書館は無料で利用できて、情報を集められる場所だ。

病気になったときは病気について知るための本もあるし、介護に悩んだときには福祉サービスの利用の仕方や介護の体験談をまとめた本も借りられる。憧れの職業につく方法を教えてくれる本も、初心者向けの料理本も、節約や貯金のテクニックを紹介してくれる本もある。暇な時間の使い方に悩んでいたら、図書館を歩けばいろんな趣味を紹介してもらえる。”読書”で良ければその場で楽しめる。


お金がなくても、誰でも使えるというのがほんとに大事で、将来もし日本が新自由主義にどんどん傾いていったとしても、今の形のまま残っていてほしい公共施設だ。


もうすぐ引越しをして、3年前は見つけられなかった図書情報館の近所の部屋に住む予定をしている。家の近所で本を無限に楽しめるなんて、どんなに素晴らしいんだろう。これからますますヘビーユーザーになりそうだ。


奈良県立図書情報館のスタッフの皆さん、あまり延滞しないように気をつけますので、これからもよろしくお願いします。










たまには遠くを眺めてぼーっとしようね。