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2023.2.22 三日月

空を見上げたら綺麗な三日月が出ていた。
駅のロータリーを早足で歩く人たちは目線を足元に落とし、そんな風景には目もくれていなかった。綺麗なものを綺麗と思うのは意外と難しいことなのかもしれない。
しかし、そのことに気づいた外国人のお姉さんと優しそうなおばあちゃんが携帯を取り出して歩道の脇で写真を撮り始めた。この月に気づいたのはたぶん僕たち3人だけですよ、と声をかけたかったが、もちろんやめた。

バイト先のお店は結構混んでいて、久しぶりにものすごく大変だった。忙しくててんやわんやになっていたため最近始めたばかりのセンターパートを整える余裕がなく、鏡に映るぐしゃぐしゃな自分の前髪を見て惨めな気持ちになりながら働いていた。しくしく。

4年生のみんなが辞めちゃうから送別会を開くらしい。自分もちゃんと頭数に入れてくれていて嬉しかった。俺は卒業しませんが。
バイト先の4年生のみんなは本当に人ができていて、彼らに影響を受けて自分も幾分かまともな人間になれた気がする。とんでもなく斜に構えていて、どうしようもなく尖っていたあの頃のまま22歳になっていなくて本当によかった。感謝してもしきれないです。

バイトが終わって店を出ると三日月はもう見えなくなっていた。その代わりに、改札口では社会人の団体が楽しそうに大声で笑い合っていた。24時近いんだから黙れよ、と彼らを横目に通り過ぎる。こういう感性は歳を取っても変わらず残っていてくれてよかった。雨風が嫌に冷たい。

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