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2024年6号【別館】

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今週の表紙:押韻島珍百景よりヴェイパーウェーブ風
「凪」「靄」「夕焼け」など様々な気象条件が
重なったシチュエーションでこの風が吹くと
押韻島から見える空と海の色が混ざり、
辺り一帯が紫がかって見えるという

2月25日は押韻の日!


【大放言】2048年問題を斬る

2024年4月からの働き方改革関連法の施行に伴い、トラックドライバーの時間外労働に係る上限規制等が適用されることで、運送業界において輸送能力が不足し、荷物が運べなくなる可能性が懸念される諸問題──いわゆる「物流の2024年問題」が取り沙汰され始めて久しいが、何を隠そう押韻島にも約6年前から「2048年問題」という由々しき問題が横たわっていることをご存知だろうか。
2018年頃に島の神によって発表されたある預言に端を発するこの問題は、これまで繰り返されてきた断片的なものと比べて明らかに詳細で、かつリズムに乗っている当該預言の内容が、一体どの程度まで正確なものなのかが主な論点とされている。
内容は主に3つに分かれ、押韻島というコミュニティにゆかりのある人物の2048年における姿と、ライミングを悪として槍玉に上げるディストピアと化した数十年後のヒップホップ若しくはラップミュージックシーンについての言及、そして預言を発した島の神自身の動向が描かれているが、一部の描写がかなり極端にファンタジックなテイストをまとっている(ラーメン屋のくだり等)ことから、詩的表現のための誇張や婉曲が含まれているのでは?とする説もある。また、島の神は時間の制限を無視して過去や未来を移動できるとされる一方で、複数の世界線を跨いで多元的に存在するとも言われているため、この宇宙の出来事を語っているとは限らない点にも注意が必要だろう。
原則として、未来は、他ならぬ我々で選び取った今の積み重ねの先にしか存在しない。が、人類史の原初よりその遠大な歩みの裏側では、占いや神託といった超常的な預言の類が少なからぬ役割を果たし、現代に至るまで影響を及ぼしてきたこともまた、揺るがし難い事実である。
いずれにせよ、約束の2048年まではあと24年。長いと見るか短いと見るかはあなた次第です。

【コラム】週刊日刊SIX

名作傑作怪作揃いの日刊SIXについて好き勝手に語るコラム。

「日刊SIX」って?

というあなたには本誌の2024年1号がおすすめ。

今週の日刊SIX

『2048』
投稿:2018年7月8日
トラック:Ben Briggs "NES Funk"

ギミックや韻の種類を主題とし、何について作詞するかはフリーということもままあるSIX作品ではある意味珍しく、内容に関してもハッキリとしたテーマが貫かれている本作では、30年後の未来に大胆に想像を馳せた“ストーリーテリング”が展開されています。架空のエピソードトークは赤裸々な本音と並ぶレベルで面白い作詞のネタだと思っているのでそこもお気に入りです。物語を産む力のある人の手にかかれば尚更。
推しポイントは「トラックとの絡み」。ゲームのBGMめいたピコピコのポップさがダークに弾けるトラックは恐らくチップチューンというカテゴリに含まれるもので、オンビートかつガチガチに脚韻を固めるオールドスクールに忠実なSIXスタイルとの化学反応が楽しめます。特にSIXさんが復活するフェーズに入ってぐっと怪しさが増していくとこ、ゾクゾクしますね。リリックにリンクして、なんかスモーク焚かれてるみたいな。画を想起させますよね。本人曰く偶然らしいですけども。
ただ、身内ネタを理解しているリスナー、つまり身内ですよね、それも結構な身内でないと、前半のむちゃくちゃなことを言っている(ラーメン屋のくだりとか)部分はあまり芯を食って面白がれないかも知れません。SYNCOPEACHさん残ってるんだ、とか。SIXさんの(邪)神格化とかSIXさんタイムトラベラー概念自体も余裕で身内ノリですしね。
まぁ、このネームドロップから掘り広げてぺーたさんやゴオウインさんを聴き直す、というディグり方もできますから。各々の作品から立ち上ってくるキャラクター(ラップではガッツリ自語りすることが多いのでよく“リアル”が尊ばれる傾向にありますが、飽くまで作品として語られるその人の話、という意味ではキャラクターだろ。ノンフィクションっていうジャンルなだけでフィクションではあるだろ。フィクションだから描けることもあるしフィクションとしてアげてくれるだけでまず十分という立場なので敢えてこういう言葉を使いますが)を掴めると一層味わい深い作品になると思います。先述のお二人なら取り敢えず「年末マイクリレー」辺りを遡っていくと……おぉっとヒントはここまで。
そもそも通常の会話ですら、頭の中の思考や情報を余すことなく、完璧に伝えて理解させるって相当難易度高い訳で、それがストーリーテリングで韻踏んでトラックに乗せてって縛りを追加された状態で、となると何もかもを一度に頬張って咀嚼して消化しきるのって、よっぽどじゃない限り厳しいですよね。
もちろん調理して提供する側としては、お客様が分かり易く「うまっ!」となれる味や「なるほど〜」と唸らせられる栄養素を引き出そうと頑張る場合もありますし、だからこそ、ただ話を聞いてる時より響いてくる、リズムのループの上で印象的なメロディや独特な節回し……フローってんですか?が繰り返されることによって強く心と記憶に残るラインになるっていうのが音楽の利点で、その最たるファクターの一つが韻による音響の反復である以上、宇宙一のライマーであるSIXさんの放つ韻一撃一撃のインパクト、そこにメッセージが合致した瞬間のエクスタシーたるや凄まじいものがあることはなんべんでも申し添えておきますが、前提として、SIXさんがSIXさん本位で書いて、我々が我々本位で受け取る中で、これだけ外的要素で構築されてる、それこそちょっと“リアル”を匂わせるかのような(中身まるっきりSFですけども)、言わば外界にデレてるパターンって、ひたすら湧き出るライムとアイディアにせっつかれながら内なる探求に打ち込んで自身で課したハードルを自身でクリアし続ける趣の強いSIXさんのワーク群では割と異質なんじゃないかなと思うので(って考えると身内ネタっぽいのもなんか、不器用萌えですよね。押韻島愛の表象のしかたが。これ誰に言ってもキモがられます)、是非、皿の端の一滴までしゃぶる勢いで情報を集めて分析してみてください。貴重なデレ。ありがたや。

MKR(最もここすきなライム)

dorako一色の週刊誌FRIDAY
M.C.Zは総勢100,000人くらいで

MKR、rhyme of the trackはなんと言ってもコレでしょう。ストーリーテリングの流れにスムースに詰められる固有名詞踏み。そして「週刊誌」の処理のために「100,000人」いることになってるM.C.Z。笑うなって方が無理ですよね。当事者だし。M.C.Zの増殖具合なら強ち……?っていうのも一種身内ノリなんでしょうが。

現代はクリーンを求める時代
害悪は消え去った
――表向きは。

こちらもかなりキてますね。母音合わせ5文字。字余りとは言え聴いてる分には綺麗にまとまってるし文章との整合性も相まって、イイですね。バランスがイイ。このラインだけでもプレイヤーとしての不遜な矜持が滲んでる感じ。
押韻島ではこれを預言と呼んで憚らない輩もいるとかいないとか。個人的に、M.C.Zメンバーとしては、なんとか100人は目指したいですね。待ってろ2048年。
(文責/怪蠱厨)

次号予告

あーい、次はキングコングのお二人ぃ。よろしくぅ。

編集後記

みんなの好きを大切に
(文/押韻島公民館狂信者)

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