2024年24号


金属探知機



《特集》「証人喚問」許容度アンケート結果(3)

概要

先日実施した“「証人喚問」許容度アンケート”に多くのご回答をいただき、ありがとうございます。
ここでは、皆様にいただいたコメントから一部をご紹介します。

過去に掲載した“「証人喚問」許容度アンケート結果(1)(2)”のつづきとなります。

また、アンケートに未回答の方は、こちらのURLよりぜひご回答ください。
https://forms.gle/ma98Epb9HFwrTihXA

採点対象

World Technique「証人喚問 feat.M.C.Z, ぺーた, SIX」
(今回は、パート10「またアングラ僻地から証人喚問」~パート18「やばい業務の請負工数担当」までが対象)

許容度アンケート(抜粋)

10

① またアングラ僻地から証人喚問
② ハイペースに発言しよう日刊モード
③ 有害コンテンツで使用認可も無しの
④ 怪しげなshowにcome on
⑤ すぐ「理想とおんなしように行かんもん...」つって
⑥ ママへ泣き付いたり小児科モン
⑦ そんな甘え見せれば一生二位かも??
⑧ って戒めが両肩に背負う荷 貨物

10
これは一作目というアドバンテージがあるにせよ「しよにんかも」でこれだけバリエーションがあるのは楽しいですね。文意も一貫しているように思えて個人的に高得点です。

9
楽曲タイトルを使用した8連打ということで単体としては評価したいブロックではあるが、既に8連打(ライムジャックであることも踏まえると12連打)が登場してしまっているので楽曲の流れとしてはやや印象が薄くなってしまっている。④⑤の「に」の重複もマイナス。拗音の扱いに関しては個人的には許容範囲であるがSIX基準だと判断が分かれるところではある。既出ブロックの「奥さん」「母さん」は素材だったので仕方ないが⑥の「ママ」は繋ぎなので必然性がないのであれば避けた方が良かったように思う。

10
SIXが曲のタイトル【証人喚問】で8連打をこなす、文字通り『証人喚問』を代表するパート。タイトルや参加MCを素材に据える押韻はライムラバーの誰もがアがる見せ場の一つだが、同音で8連打まで到達してしまう辺りSIXの確固たるジツリキのみに留まらない、運命的なものを感じる。ライミンの思し召しであろうか。ライムを堂々たる主役に据えつつ、365日連続リリース企画『日刊SIX』を踏まえたワード【日刊モード】や、本人のアンダーグラウンドアピールが高じての有害図書ボースティンを織り交ぜる繋ぎもスムーズで、完成度が非常に高い。文句ナシ。まぁ強いて挙げるなら【おんなし】【モン】など、言わなくはないかもだけど音合わせのため感が強い発音や造語っぽいワードが人によっては眉ピクってなるかな、くらい。「しょう」も「かも」も単品では比較的同音ライムが浮かび易いと思われるお題だが、だからこそ如何にライムとして馴染ませリリックとして接続するかはプレイヤーの腕次第であり、そういう意味でもベスト級。

11

① どんなにヤバくてもジャンルは自慰系
② M.C.ZはG、毛虫
③ ばりに人権無視
④ 徒花のスキルは最早事件
⑤ 毟ろうって輩は求む即実刑
⑥ 筵に晒されたっていじけん 寧ろ
⑦ 嬉々として磨く 意地、剣、MC論
⑧ 満たす癖と完成度の維持兼務しろ
⑨ ベクトルは正に異次元 M進路
⑩ ムーシーローに
⑪ ムンシロに
⑫ 蒸しロールケーキに
⑬ ガムシロ足す

8
「人権無視」「毟ろう」が説明不足か(-1)
「意地、剣、MC論」の「剣」が浮いていると思う(-1)
「ムーシーロー」「ムンシロ」など、本当にあるのか知らないが、ありそうと思えたのでOK
ライムパターンを徐々に変化させながら連打を繋いでいく手腕GJ

7
「M.C.Z」と「MC論」がギリギリ重複じゃないかなと思いました。「M進路」も「M」の被りが若干気になります。
実刑→筵のイメージの連続性は好きです。

8
①~⑧(⑨)の4音8(9)連打、④~⑧(⑨)の5音5(6)連打、④~⑬の3音10連打を組み合わせたブロック。グラデーションのように変わる配置の面白さがある反面、ルールに準じた韻の魅力には欠ける印象。②③の「MC」の重複や⑨の子音不一致かつ「M進路」のような造語など細部の粗が目立つ。⑩~⑬は食品関係の素材で揃えた良さがあるだけにもう少し音数がある組み合わせで見たかった。

10
M.C.Zの個性として引き続き踏む箇所を散らしつつ、韻自体も伸びたり縮んだりする細やかな仕掛けが楽しい。同音ライム4連打縛りでやる事か?とも思うが、踏んでいる箇所が分かり易い同音ライムだからこそ映えているという見方も可能か。特に自虐スタンスへスマートに絡めた「じ(ー)けむし」連発から脚韻配置にスイッチしての「じけむしろ」→「いじけんむしろ」という流れは、同じ音を同じタイミングで繰り返し続けることで聴き手に「どんだけ踏むねん」という高揚感を産ませ、ワクワクをエスカレートさせる押韻の畳み掛け効果に、「なんか踏んでる音増えてね?」が上乗せされなかなかの盛り上がり。惜しむらくは【異次元M進路】というライムとしては「いじげん」の「げ」も「えむしんろ」の「え」も苦しく、文章としてはシンプルに意味不明で苦しい、二重苦を背負ったワード。しかもコレで着地を誤魔化しているので絶妙に締まらない。また、異なる言葉のイニシャルであるにせよ【M】が3回、【C】が2回重複しており、同音ライムというか同音異義語としてグレーなラインに感じる方もいるところか。
「むし」「むしろ」は前段の「しょう」「かも」同様、比較的簡単に複数個のワードがヒットする、リスナーからすれば楽そうな、プレイヤーからすれば助かるお題だが、「むし」単一のライミングで満足せず更に音を足していくテクニックは言わずもがな、かなり深くまで鉱脈を拡げて発掘してきたと思われる【ムーシーロー】と【ムンシロ】がお見事。いずれも食物を指す語彙であり、次パートの【カロリー過多】への繋ぎとして活きているのも評価ポイント。

12

① カロリー過多なshit
② イかれたオカズ ショタかロリかタナシン
③ 形無しの具足磨く ロンリー刀師
④ 俺より踏めない奴が 俺の論理語んなし

9
おおむね問題ないが、強いていえば「ロンリー」「論理」は既視感が強いので減点(-1)
文章の破綻以外で減点するのは今回の趣旨から外れる気もするが、許容度という意味ではこうなる

9
最初「イかれたオカズ」の部分が唐突に感じましたが、後の「具足」が「愚息」と掛かって自慰行為を連想させ、アンチのオナニー→「俺の論理語んなし」に繋がってくるのかと解釈してひとり感心しました。
ただ刀師が具足を磨くものかどうかは、知るところではございません。

9
7音から6音に減ってしまうのが(③の「形無し」をクッション的に挟んでるとは言え)順番としては惜しい。しかし文意を優先させた着地には好感が持てる。②のラインは作者のキャラクター的に許容できるワードではあるが「タナシン」を英字表記にしなかった点は違和感が残る。

10
M.C.Zのverseが続く。同音ライムによる連結ではなく、前段の「むしろ」から意味による連結を頼りに移行してくるパート。突飛な言葉選びやキモタマっている【ロンリー刀師】が悪目立ちするものの、トリッキーな構成や1投目のキャラ名連発などキワモノぶらずにいられないM.C.Zのスタンスで慣らされていれば受け入れられないほどではないかな。ひとり遊びを匂わせるラインから【愚息】と【具足】をかけて縁語っぽく【ロンリー】な【刀師】で落とす辺りは、無茶な韻を無茶な繋ぎで成立させようとした結果文量が嵩み早口になっていくのも相俟ってネタの詰め込み方に腐心する様が想像でき、個人的には嫌いじゃない。でも踏めてるからって下ネタが急だと思う。
構成自体はベーシックな脚韻に寄せつつ、お題の一部をひっこ抜いて頭韻部分に配した【形無し】が畳み掛けポイント兼アクセントになっている。初版から変なことに手を出しすぎな向きもあるが(当時は空前の『証人喚問』ブームが到来するとは夢想だにしていなかったため初版も何も無いっちゃ無いが)、同音ライム4連打なのに安定感すら覚える他2名は勿論、それこそ後に続くREMIXまで含めても、このような“もう一捻り加えよう”とするプレイングはあまり見られるものではなく、テーマどころかルールが統一されたマイクリレーの中での味変というか、パートやプレイヤーのキャラクターを立たせるスパイスとして美味しく機能しているとは思う。

13

① 今頃 韻がどうこうってよ しゃしね
② 理解出来んか 話の要旨や信念
③ んじゃ判断は単純な良し悪しね
④ 後で媚びても容赦しねぇ
⑤ よっしゃー!死ね

9
「しゃしね」は方言だろうか、分からなかった(-1)
このパート全体が訛っているなどの仕込みがあれば“あり”と判断するかも
展開はとてもスムーズ

10
破綻がほぼ無いように思います。コメントを書くために何度も見返してうちに「ね」がゲシュタルト崩壊しました。

8
②の拗音の扱いに関しては許容範囲だが③についてはアウト判定。しかしそれを除いてもルールの4連打は成立しているという危ういブロック。「良し/よっしゃー」は同義韻であり、①の方言も「せわしない」と同源であれば④の「ねぇ」と被る同義の疑いあり。前ブロックと同様に着地に印象的なラインを配置している点は評価したい。

-10
M.C.Zのverseが続く。長くない? 【しゃしね】は「うるさい」という意の方言か。韻を踏むための企画で【韻がどうこう】うるせえよとか言いだす情緒はやや危ういが、前段の【俺より踏めない奴が俺の論理語んなし】と併せて、既に一定レベル以上のスキルを実証している俺に韻踏める踏めない、踏む必要があるないの次元で突っかかってくんなよ的な、Don't test da master的な主張と読めなくもない。前段と同じく、音ではなく、内容を引き継いで詞を紡いでいく点は長いなりの工夫と言えるだろう。ただ尖ってる割には【良し悪し】が「よしゃしね」で踏めてなくてやはり詰めが甘い。
5連打目について。【よっしゃー!】はネットラップの英雄らっぷびとが「風玉」名義で活動していた時代の快作『下剋上 -N.E.X.T-』、若しくはニコラップが誇るクラシック中のクラシック『Otakky People's Action!!』における妖狐verse辺りの、一致率高めのライムを連打した後に挟むアドリブをオマージュしていると思われる。アドリブのオマージュでも踏むという徹底ぶりはオタク心を擽るが、【死ね】が余計。凡ゆる創作において【死ね】は使わないに越したことはない。余程この手の話題に思うところあったのか、ムカついていたのか、彼の【論理】ではセーフ判定だったようだが、踏めてるからと軽々しく用いた感は否めず、後味に看過し難い悪印象を残してしまった。

14

① 言わずと知れた末期論者
② もう効かないの並のマキロンじゃ
③ 無理してブラック塗りたくるマッキーw
④ ロジャーみたく持ってく俺なら
⑤ 真っ黄色じゃん

10
マッキーのブラックに対して「真っ黄色」が何らかのボースティングとして成立しているのか分からないが、説得力を感じたのでOK

8
「ロジャー」が「ONE PIECE」のロジャーなのか、「くまのプー太郎」のロジャーなのかが気になります。
どちらの場合にせよ、もう少しキャラクターを示すワードが盛り込めればよかったかなと思います。

7
⑤が黄色人種の意ならば③からの流れが見事であるが、④の「ロジャー」が何を指しているのか汲み取れないのでかなり損をしている。具体的な人物を指しているのであれば範人や大典太のように画像を表示する方法もあったのではないだろうか。

10
M.C.Zのverseが続く。どう考えても長い。何故M.C.Zのパートがこんなにも長いのか、そもそも何故各プレイヤーの小節数が統一されていないのか、理由は不明だが、正味別に不必要なパートと断じて差し支えない。ボリュームの水増しにはなっているか。日本語ラップでは擦り倒された肌の色ネタを想起させる【ブラック】と【真っ黄色】の対比に【マッキー】を持ち込んで踏む発想は評価に値するが、【ロジャー】が何のロジャーを指しているのか判然としないのがわざわざ固有名詞を出した意義に欠け興を削いでいる。前段までに認められた文章としての最低限の連結さえ明らかに弱まっており、一応書けたし入れとくかと惰性でダメ押しされたverseなのでは?と勘繰りたくなる。

15

① 人生設計甘きロージャに
② ダンベルトレーニングだ まあ着ろジャージ
③ やばい事実ばら撒き 老弱のおれが
④ 天誅の巻~ 印籠じゃあ~
⑤ 巡る時代 いま岐路ジャンクション
⑥ 快刀で乱麻切ろう ジャッキン!
⑦ 顔洗い 寝間着ロンジャンに
⑧ 着替えてgo 何万kmジャーニー

8
「ロージャ」がわかりませんでした。ソシャゲの登場人物?
ジャージを着ればいいのかロンジャンを着ればいいのかわからず困っています。
「まきろんじゃ」を受けての韻なのでやっぱり多少の苦心は感じます。

9
ライムジャックの行為については[せ-し-と-ら-し]のブロックの評価と同様だが、音数が少ないこともあってこちらの方が破綻が少ない点は評価できる。MCZから繋いだブロックで過去の共作であるRapglossで使用した「ダンベルトレーニング」をワードドロップするよな細かい技は流石。「老弱」のようなマイナスワードを水戸黄門に繋げるのもやや無理矢理ではあるが面白く、ライムジャックから発掘した中では⑥の「快刀で乱麻切ろう」のフレーズが特に良かった。しかし「ロージャ」はロジャー以上に汲み取れないし、字余りライムが大半を占めるというのも若干の歯切れの悪さが残る。

10
そんな蛇足味のある前段をSIXが拾い上げまさかの追い討ちに採用するという色んな意味でエグいパート。しかもまた8連打。何がSIXをそこまで駆り立てるのだろうか。
【ロージャ】は恐らくドストエフスキーの長編『罪と罰』の主人公を指していると思われるが、あの小説でロージャに課される壮絶かつ数奇なストーリーを【人生設計甘き】と形容するのが最高にニヒル。【ダンベルトレーニング】【やばい事実】は怪蠱厨との初共作『Rapgloss remix』からの引用であり、追い討ちの中にも愛を忘れないドSIXクオリティを堪能できる。【印籠じゃあ〜】の隙のある感じにも萌えるが、実は直前の、天誅でも天の巻でもなく【天誅の巻〜】とかいうザックリ時代劇な語彙ではありつつ地味に聞いたことのない、即ち「まきろじゃ」で踏む用に拵えられたワードで押しきるためのユルさを演出している【〜】とも取れ、【老弱】と油断させておいてからのご隠居ムーブをくらわす描写という点を併せると、若干怖い。こっちも麻痺してきたのか、petaへの追い討ちに比べるとだいぶ自然に走りきれており、「ろじゃ」ってまだイけそうじゃね? しゃぶり尽くしたろうぜという怪物じみたライミングへの意欲がより鮮明に迫ってくる。怖い。

16

① 投げる辞表 勤続断ち切る
② 常にサーチ 金属探知機
③ ライムナイフ 貴族たちkill
④ 大きいぞ 食ったチキン

8
「勤続」「金属探知機」「貴族」「チキン」など繋がりが見えず、ただ寄せ集めた印象がある(-1)
「サーチ」「ライムナイフ」といった繋ぎで韻の話に寄せる意図も見えるが、推敲不足を感じる(-1)
少し早口になったとしても繋ぎを詰め込んで説明不足を解消したほうが個人的には好み

8
行ごとに文章的な繋がりがないのが気になります。
金属探知機→ナイフ→チキンこの辺を上手くつないでストーリーが見えればより面白い表現が出来そうです。

8
②の素材先行なので①と逆であればもう少し印象が変わったように思う。接続詞を極力排したスタイルなので仕方ない部分はあるが、それぞれが独立した文章としては自然でも全体を通しての繋がりが薄いのが残念。

10
なんだかお久しぶりなpeta。【金属探知機】を軸として、同音ライムならではとも言えるユーモアが内包された端正なデキの4連打で荒れた場を落ち着かせている。発音したら同じように聴こえるという点でのみ接するワード群だが、並べてみるとまあまあ粗挽きな繋ぎとの噛み合わせもあり何やら物騒な匂わせに見えてくるのだから面白い。【大きいぞ 食ったチキン】のリズムの崩し方がナチュラルかつビートにもフィットしており好み。

17

① 深層心理 より深いとこを
② 真相知りたいよ 回答請う
③ 惜しい阻止率 なら書いとこう
④ 失踪シリーズ 初回投稿

9
「深層心理 より深いとこを」⇒「真相知りたいよ」の接続が不自然に感じる(-1)
「~なら書いとこう」⇒「深層心理 より深いとこを」という倒置法ならOKなのだが
このシーンの動画キャプチャして携帯の待ち受け画面にしています

9
文頭と文末で「しそしり」「かいとこ」と4文字ずつ踏むのは流石だと思います。
「惜しい阻止率」が何を指すのがちょっと分かりづらいところですが、音として気持ちいいので音源だとあまり気になりませんでした。

8
語頭と語尾で異なる4音の同音を組み合わせるという手法は、ルールに則ったうえでオリジナリティも発揮している。前ブロックと同様にそれぞれが文章としては成立しているがやはり全体の繋がりが希薄なのが惜しい。

10
peta、覚醒。
シックにまとめたプレイングの延長線上、ちょくちょく覗かせていた狂気性が韻の形で発露しリスナーの耳と脳を犯していく。頭韻に「しそしり」、脚韻に「かいとうこ(う)」を配し、“同時に”4連打してみようといういかれた試み、そしてそれを現実にやってのけるスキルは完全に神の域に突っ込んでいるにも関わらず、前段からさして変わらないトーンでなんか楽しそうにやってるのがヤバい。押韻島のヤバい方は、やっぱりpetaなのかも知れない。
同音ライム4連打しまーすというネタで、他のプレイヤーが捻った構成やライムジャックで一通り遊び散らかしてからのコレは相当効く。先述の畳み掛け効果もあって初聴時のインパクトは本作ダントツではないだろうか。なんとかアラを探そうという下衆な視線で弄れば、畏るべきライム達にスペースを取られている分繋ぎが弱い=文章としての連帯が弱いpetaのverseに共通する課題や【回】の重複を指摘することもできようが、私は、前人未踏のステージで前人未踏の演技をやり遂げ、前人未踏のライムを届けてくれた彼の、並外れたライムへの愚直な姿勢をこそ、ただ両手を上げて賞賛したい。エポックメイキングな『証人喚問』屈指のハイライトと言えるだろう。

18

① やばい業務の請負工数担当
② でも着地決めんぞ おい こうスタッと
③ 呼び名ご自由に 王・イコン・スター等
④ 車体にはキズも負い擦った跡
⑤ 原点回帰して 押韻コンスタント
⑥ また道なき道を行こう スタート
⑦ 道中ハプニング多いコース たんと
⑧ 乗り越え ラビット追い越すタートル

9
「車体」「道なき道」「コース」「ラビット追い越すタートル」この辺のワードでなんとなくまとまったストーリーが見えてきますね。
その分前半の韻がノイズに感じました。
文字数・韻の連打を見せる意味では同じバースに持ってくるのが最適なんだろうとは思いますが、難しいところですね。
韻の配列の入れ替え、繋ぎの言葉でうまいこと纏めれたら更に高評価になるかと思います。

10
[こ-す-た-と]の同音は『鰻brand』における7連打があるが、音数も回数も増やした6音8連打という難易度の高い素材を選定しており、この楽曲の〆に相応しい内容となっている。完成当時、作者は①④の「負」の重複を気にしていたように記憶しているが、瑕疵があるとすれば②⑦の「と」の重複のように思う(念の為に検索したら「坦途(たんと)」という言葉を見つけたが意味合いからして⑦はこれでは無いと思われる)。「ラビット」がエミネムの比喩と捉えることが出来る⑧は過去曲で主張して来たことも踏まえており、まさに集大成のブロックと言える。

10
petaまではっちゃけだした本作をガッチリ〆る安定感たっぷりの8連打。殿を務めるのはもちろんSIX。邪神SIXのライミングを持ってすれば世界を散らかすのも片すのも自由自在という訳である。【負】の重複と最後の最後の最後だけに【タートル】の【ル】が字余りっぽく映る点に目を瞑れば実に丁寧な音合わせと程よいケレン薫るライム、一貫したストイックさボースティングに【旧世代マシン】周辺のワードを回収する【車体にはキズ】【道中ハプニング多いコース】といったワード選びまで、SIXの粋を盛りに盛った極上の「おいこすた(ー)と」で祝福すべきフィナーレ兼息も絶え絶えのゴールイン。「おいこすたと」踏みとして見れば一致率は完璧に近く、『証人喚問』のトリを飾るに相応しいライミングと言えよう。
因みにSIXは1投目を除き、人のライムを追い討ちしている時まで、8連打がデフォルトになっている。化け物がよ。
最後のverseなのでオマケに曲全体への評を添えておく。『証人喚問』は前提としてなかなかにアバンギャルドというか、好事家ウケ特化というか、“実験的”という表現を幾度か使ったとおり、取り敢えずだいぶ変なことをやろうとしているだいぶ変な企画から産まれた曲なのだが、集ったプレイヤーの地力と何よりトラックの功績によって、ある程度聴けるレベルのカッコよさが担保されており、結果として、行くところまで行っちゃってる、一部ちょっと致命的なとこまで行っちゃってる異形のライミングや、音源及び動画が放つ謎のアマチュア集団臭が好ましい方向で受容され、恐らくは当初想定されていたよりも遥かに広く界隈に膾炙し、ここまでのムーブメントに発展したのではないかと考えられる。後世に与えた影響の大きさを思えば、同音ライムにとっても、そして押韻島にとっても、一時代の標になり得る重要な作品であることは疑い様が無い。グッドライミン。みんなもやってみよう。

たくさんのコメントありがとうございました。

(集計・編集/SIX)



《コラム》同音連打ライムの前半破綻と後半破綻

概要

同音連打ライムに破綻したフレーズが含まれる場合、その登場位置によって許容度はどう変化するか?

例(同音ライム4連打の場合)

前半破綻

  • 第1・第2フレーズに破綻したフレーズを配置、第3・第4フレーズに自然なフレーズを配置

後半破綻

  • 第1・第2フレーズに自然なフレーズを配置、第3・第4フレーズに破綻したフレーズを配置

読者アンケート

前半破綻と後半破綻のどちらが許容しやすいか?
また、その理由は?

(押韻島公民館でも聞いてみたが回答は得られなかった……)

前提条件

そもそも破綻したものを採用せず、自然なフレーズだけで連打ライムを構築できればそれがベスト。
だが、ここでは自然なものが2つしか出せなかったという仮定で考える。

回答例(SIXの場合)

  • 後半破綻のほうが許容しやすい

  • 後半では発掘難易度が高くなるため、その分評価が補正される

  • 連打回数の加点によって破綻の減点が相殺される

  • したがって自然なものはなるべく序盤に使用する

  • 特に8連打以上の場合に顕著(第1~第4フレーズを本論、第5以降はボーナストラック的に捉える)

(文/SIX)



《付録》同音ライム4連打マイクリレー2024の収束

前回のあらすじ

なぜか別ルートの展開を知っていたゴオウイン。
ありえないはずの事態に直面し、SIXは混乱の最中にいた。

名探偵ゴオウイン

「ゴオウイン、なぜ……」
SIXは、理解しがたいという表情でゴオウインを見つめていた。

「断片的な記憶を繋ぎ合わせ――」
「今、すべてを理解しました」
ゴオウインはゆっくりと語り始める。

「その《タイム・スクイーザー0》、察するにタイムマシンの類でしょう」
「SIXさんはその装置を使って、何度も時間を逆行した」
「そして、少しずつ世界に微調整を加えながら、目的を達成しようとした」
「あなたの目的が、単純に“同音ライム4連打マイクリレー2024”を完成させることだったのか」
「それとも背後に、もっと大きな計画があったのかは分かりません」

SIXは茫然としてゴオウインを見ている。
何も言い返さないところを見ると、当たっているのだろう。

「いずれにせよ、少しずつ変更された世界では、小さな矛盾――違和感のようなものが増幅されていった」
「それらが無数のヒントとなり、消された記憶を蘇らせ、俺を真実に到達させてくれました」
「ということで」
「これ以上、この世界を好き勝手にいじることは許しません」
「今回でゲームオーバーです」

【つづく】


今週のリリース情報

  • ご存じの方がいたら教えてください


今週のフリーライムマーケット(抜粋)


今週の押韻島文庫(抜粋)

別冊SIX

ライマーノーツ

  • 「antidote」解説(2024.6.6)

  • 「sandcloud」解説(2024.6.7)

  • 「Heat Up(beatjack)」解説(2024.6.7)

  • 「i」解説(2024.6.7)

  • 「mm」解説(2024.6.8)

  • 「Lights, Camera, Plan, Do, Check, Action」解説(2024.6.8)

  • 「ariadne」解説(2024.6.8)

  • 「just chillin」解説(2024.6.9)

  • 「浮舟」解説(2024.6.9)

  • 「バースのようなもの」解説(2024.6.9)

  • 「survivor」解説(2024.6.10)

  • 「蜃気楼」解説(2024.6.10)

  • 「Re:Re:emojirap」解説(2024.6.10)

  • 「abracadabra」解説(2024.6.10)

  • 「made in hell」解説(2024.6.11)

  • 「god bless me」解説(2024.6.11)

  • 「般若心経(日本語吹替)」解説(2024.6.11)

  • 「moment」解説(2024.6.12)

  • 「野分」解説(2024.6.12)

  • 「1」解説(2024.6.12)

  • 「気まぐれマスマティックス」解説(2024.6.12)

  • 「coelacanth」解説(2024.6.13)

  • 「嵐が丘」解説(2024.6.13)

  • 「遊星からの物体SIX」解説(2024.6.13)

  • 「stay away」解説(2024.6.13)

関連リンク


今週の押韻島地下城

  • 城内の電話線が切断されており、一時的に外部と連絡不可能な状態となっています


編集後記

今週号の編集担当、SIXです。
好きな漢字は韻、嫌いな熟語は録音です。
よろしくお願いします。

(文/SIX)


愛読者アンケート

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今後読みたい記事のリクエストも募集しています。


次号予告

  • 《特集》未定

  • 《企画》未定

特集のストックがない!


編集 SIX
発行 押韻島公民館

2024.6.16

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