【短編小説】3/23『メーカーサイクリング』
「おめでとうございまーす」
緑色の球を目視してすぐ、目の前のハッピ姿のお兄さんが言う。
「二等のホットサンドメーカーご当選でーす」
ハンドベルこそ鳴らされてないけど、腹式呼吸の声が商店街に轟いてる。注目浴びてちょっと恥ずかしい。
礼もそこそこに電気店の包装紙をかけられた箱を抱えて家に戻る。
箱の裏書きに書かれた簡単な説明を読む。パンを乗せて具を乗せて、さらにパンを乗せて機械で挟めばいいらしい。
パンも具材も、一応ストックあるなぁ。片付け面倒だったりするかな。そしたら一回でやめればいいか。
とりあえず箱から本体を出して諸々セット。一番ベタなハムチーズサンドを作ってみる。
タイマーが付いてないからスマホでアラームかけとく。焦げたらやだし。
そうしてできたホットサンド食べてみたら……なにこれ、うまぁ!
トーストにハムとチーズ乗せたものとはまた違った美味しさ。これはちょっと、しばらくハマっちゃいそうだぞ。
なんて思ってレシピを色々探してみる。ガッツリ系からスイーツ系まで、あるわあるわホットサンドレシピ。
さすがに買ってこないとない食材だらけだから、狙ったレシピに必要なものを買うことにした。
普段使うにはちょっと億劫だから、休日の朝をメインに週一回か二回。
しばらくはそれが“おめざ”になってダラダラしがちな休日でも早起きできるようになったけど、二ヶ月を過ぎた頃からだんだん飽きて来た。
うん、大体こんなもんだよね。
ホットサンドメーカーを綺麗に拭いて、元々入っていた箱に戻した。そのまま納戸へ。
多分またしばらくしたらホットサンドブームが再来するだろうから、そのときまで仕舞っておく。
そして目に止まったヨーグルトメーカーを納戸から取り出した。懸賞で当たってしばらくの間ブームだった自家製ヨーグルト、久しぶり食べたいな。
そんで飽きたら今度は頂き物のチーズフォンデュメーカーを出して、と。
便利な調理家電を使いながら都度変化する食品のマイブーム。飽きっぽいのも悪くないなってニンマリしながら、納戸を閉めた。
次の出番まで、おやすみなさい。
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