【短編小説】11/25『美しき幸福』
はあぁ……美しい……。
トルソーに着せたランジェリーをあらゆる角度から眺めて、ウットリとため息をつく。
色、形、デザイン、縫製。そのどれもが美しく、優雅で雅だ。
作成時に想定されたであろう体形で着こなすためには、着用する側の努力も必要だと私は思っている。
私の身体はまだその地点に到達していないから、完璧な体形であるトルソーに着てもらって眺める日々を過ごしている。
痩せすぎていても肉付きが良すぎても形が崩れてしまいそうで、なかなか身に着けることができない。
私もいつか、このランジェリーのように素敵なものを作れる人になりたい。
描いては直してを繰り返して、紙が毛羽立ってしまったデザイン画を見つめる。うーん、まだまだ。
学生の身とは言え、もうちょっと完成度の高いデザインを生み出したい。
ちなみに、トルソーが身に着けているのは、私が崇敬するランジェリーデザイナーさんが作った上下セットのもの。
日本製ならではの細かで繊細なレースの装飾や、こだわり尽くして手染めされた色、立体縫製の技術などがもう芸術的。
早くボディメイキングして完璧に着こなしたいという気持ちと、トルソーに着せたままうっとり眺めていたい気持ちとが混在する。
二着買えればいいんだろうけど、学生の身で高価なランジェリーを二着買うのは分不相応だと思ってるから、自立できるようになるまでは我慢。
就職できたら初任給で買うんだ!
あぁ、それにしても本当に美しい……。
私もこんな風に、眺めてるだけでも幸せになれて、身に着けたら自分に自信が持てるような、そんなランジェリーを作れる人になりたいな。
思いつく限りのデザインを描いて描いて描き続けて、もっと高みを目指すんだ。
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