見出し画像

【短編小説】4/22『オトナって。』

 年を重ねたら自然と大人になると思っていた。
 周りの“大人”がそうなように、自分も自然に結婚して、自然に子供を産んで、自然に大人になるんだと。
 違うとわかったのは三十歳を越えてから。
 なんだか様子がおかしいぞ? 十代のころとなにも変わっていない。
 変わったのは住環境と年齢だけ。中身は子供のままだ。
 確かにたまにガキみたいな大人を目にすることはあったけど、まさか自分がそうなるなんて。
 これはそのうち親に『結婚はまだか、子供はまだか』と言われる日が来てしまうのではないか。でもだって、就職して以来新しい出会いなんてないし。自然に生きてたらできると思ってた旦那や子供ができる気配は一向にないし。っていうか仕事忙しすぎて彼氏作る気力も残ってない割に、お給料は安くて時間にも余裕なくて。週に二日の休日は家で体力回復して溜まってる家事をこなしたらもう終わってて……。うーん、愚痴りだしたらキリがなくなってきた。
 そもそも大人ってなんだ?
 年齢的には“成人”後だけど、世間的にはまだまだ若いし未熟な人もいると思う。経験や実績を積んで大人になっていくんだろうけど……精神的に“自分は大人だ”なんて言える人、いったいどのくらいいるんだろう。少なくとも私は言えない。
 結婚とか出産とかって、「するぞ!」って思わないとできないもんなんだなーっていうのを知っただけで、ちょっと大人になれてる気もする。
 別に誰かに谷底に落とされて鰐に食べられるようなこともないんだし、早いうちに大人になれたほうが楽な気もするけど……。
 彼氏欲しいって最近思わなくなっちゃったな。職場に気になる人もいないしな……。
 なんて考えながらゴロゴロしてたら休日が半分終わっていた。悲しい。
 もういいや。大人になるのは明日から。明日になったらきっと大人になれてるはず。
 ってグイーッと伸びをしたら足が吊った。いたたたたっ!
 若い頃はこんなに身体のどこかが痛くなることなんてなかったんだけどなぁ。
 そうか、これが“大人”の証ってやつか……。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?