【短編小説】6/23『夜ふけ』
眠れないのはいつものことで。だから今日もまたかーって思いながらベッドをゴロゴロ。
窓の外から街灯が少し差し込んできて、室内をぼんやりと照らす。青色の光が室内の輪郭を縁取る。
真っ暗だと眠れない私にとって、その青は安住の光。
深海の底ってこんな感じかな……。
想像だけでトリップしてみる。
扇風機の風に揺らめくレースのカーテン。その影が天井に伸びる。
ゆらり、ゆらり……オーロラのように揺れる影。ゆらり、ゆらり……ゆらり、ゆらり……。
なにも考えずに眺めていたら、瞼がゆっくり閉じていく。
ゆらり、ゆらり……暗い視界に揺らめきの残像。
海に守られるような感覚で揺れに身体を任せてみたら、そのまま眠りの波に乗っていた。
眠りの淵は居心地がいい。
ずっとここにいたい。
けれど重力が身体を沈めるように、睡魔もわたしを連れて、深いところまで潜ってしまう。
そうしてしばらくして、気づいたら朝になっていた。
あぁ、また夜明けか。
窓から差し込む眩しい光に絶望する。
眠れないのは、次の日に行きたくないから。
絶対に夜は明けるとわかっているのに、少しでも抵抗したくて眠らずにいたら、いつしか眠れなくなっていた。
また今日も、起きて、着替えて、出社して仕事して。帰宅して身なりを整え食事を摂ったらまたベッドへ……。
行く先は遠く、終わりが見えない。
あぁ早く、深く、永い眠りの世界へ――。
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