【短編小説】11/20『猫と陽だまり』
やっとこの季節が来た。
「毛布っふ出すよー」
キャットタワーで寝ている愛猫に声をかけるけど無反応。一年前のことだし、忘れてるのかもしれない。もしくはいまは、それほど寒くないのかも?
とりあえずベッドメイキングがてら、猫が気に入っている毛布を出した。長方形の小さいやつ。人間だと肩口くらいしか温められないけど、猫には充分な大きさ。
実家から持ってきたやつだから柄はちょっとダサいけど、猫的には関係ないだろうと思う。
半分に折りたたんで枕元に敷いて、私は別の作業をする。
洗濯が終わった衣服を洗濯機から取り出して窓際に干して……終わって振り返ったら、毛布の上で猫が丸くなっていた。
「ふふっ」
嬉しくなってニヤニヤして、洗濯かごを片づけてからベッドに戻った。
アンモニャイト、かわゆいのぅ。
ふわふわのお腹に顔をうずめて猫を吸う。あぁ至福……。
夏場は暑くて一緒に寝てくれない猫が布団に入って来てくれると、季節が変わったんだなって思う。さすが犬より季語が多いだけある。
ということで、世間は秋から冬にかけての寒い時期になる。
さっき洗い終わったのも秋冬物の衣類。それが乾いて着られるようになったら、今度は春夏物を洗濯して乾かして、防虫剤と一緒に圧縮袋へ入れて収納するのだ。
人間は衣替えが必要だけど猫は……猫も実は必要なんだよね。
換毛期ってのがあって、季節の変わり目は抜け毛が激しい。夏毛と冬毛に生え変わるためだけど、ブラッシングするともう一匹猫ができるんじゃないかってくらい抜ける。でも本描はモフモフのフサフサのまま。どこに余分な毛が収納されてたんだろうか。
猫もストレス溜まると毛繕いしすぎて禿げちゃったりするから注意が必要だけど、うちのコはいまのところ大丈夫みたい。でも気を付けてあげないとな。
お腹から顔を離したら、猫は手で自分の顔を覆い、足を出してニョーンと伸びをした。そしてまた寝た。
眩しいらしいが昼間なのでちょっと我慢していただこう。
このまま一緒に寝ちゃってもいいけど、どうしよう。小腹が減ったな。
ストックしてあるお菓子の袋を開けて、漫画を読みながら食べようと準備していたら、いつの間にか猫が床に座ってた。え、ワープした?
「“ちっちゃいの”食べる?」
「にゃー」
「んじゃ出すか。何味がいいかな~」
ちっちゃいの、と我が家で呼んでいる小分けにパックされたドライフードを収納箱から出した。
「はい、右ね、右側のお皿」
カラカラと音を立てて、二個並んだご飯皿の右側のお皿へカリカリを入れる。
左右を理解している猫はすぐに右のお皿へ向かった。
小袋に入っているのは数粒だけど、おやつにはいい分量らしい。
カリカリと音を立てて食べる猫と一緒に、私もポリポリと音を立てておやつを食べる。
休日の昼下がり、家事も全部終わらせて気分も良い。
あぁ、幸せ。
いつまでもこの幸せな日々が続きますように。
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