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【短編小説】8/23『夕涼み』

 道路に水をまくといろんな生き物が集まってくる。
 鳥、犬、人間のこども、たまに大人。
 縁台でも出して冷えたジュースとか缶ビールとか、氷水に付けたトマト、串に刺したキュウリでも出したら金とれんじゃないかってくらい。ホントにやろうかな。営業許可取ってないと罰せられるかな。
 とりあえず自分がくつろげるように、庭に出してたキャンプ用の折り畳み椅子を玄関先に出して座ってみる。おぉ、いいねぇ。あとは、水を張ったタライに入ったスイカとかあれば完璧。
 ご近所さんの目に晒されはするけど、挨拶くらいならいつもと同じコミュニケーションだし、車通りが少ない時間なら更に快適。
 いやぁ、やってみて良かった。
 工事現場で砂埃対策に水撒いてたの、前通ったら涼しくて真似してみたかったんだよね。
 湯舟にためた残り湯をそのまま捨てるのももったいなかったし、洗濯に使うのはちょっと嫌だったけど、これならいいわぁ。入浴剤使わなくて正解。
 もちろんゴミとか汚れが取り除けるように浄水効果があるホースで吸い出してから撒いてるよ? 誰に対してかわかんないけど、念のため。
 休日のその行動に味を占めて、暑かった日の夕方、仕事から帰ってきたあと打ち水するようになったら気持ちよくて習慣になった。
 こういうとき、頑張ってマイホーム建てて良かったって思える。
 一緒に住む予定だった人には完成直前に振られて一人で住んでるけど……いまでは広い家に一人暮らしするのが快適になってしまった。
 いや~、これはもう、このまま“おひとり様”確定コースなんじゃないの? 元々そういうつもりで生まれてきたんだわ、きっと。

 今度の休み、庭の手入れして縁側で夕涼みできるようにしようかな。
 しばらく放置してたら草ボーボーになっちゃうんだもんなー。草の生命力ってすごい。
 目隠し用の樹木の剪定も、お隣さんの迷惑にならない程度にしておかないと。
 そんで、綺麗になった庭を眺めながら縁側で冷えたビールなんか飲んじゃってさ。うぅ~、たまらん。
 隣に豆柴とか猫なんかいたら完璧だね。
 別にパートナーがいない寂しさを紛らわすためじゃないからね? 誰に対してかわかんないけど、念のため。念のため……。

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