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【短編小説】11/23『珍味をこよなく愛する』

 酒には弱いがツマミが好きだ。特に珍味系。塩辛にサキイカ、ワサビ漬けやチャンジャなどなど。なかでも一番好きなのはエイヒレ。
 しょっちゅう居酒屋には行けないから、自宅で炙るタイプのエイヒレをスーパーでたまに買う。
 決して安くはないので、たまの贅沢品って感じだけど、たまにだからいいんだよね。
 最近だとノンアルコールビールで美味しいものがあるから、それと一緒にいただくとまた格別。
 友達の知り合いが「アルコールが入ってないビールなんて不味いもの、誰が飲むんだ」って言ってたらしいけど、アルコールに弱いけどビールの味がほしい人が飲むんだよ、と教えてあげたい。
 人間の大人がみんな、お酒飲める体質だと思うなよ、ということも。
 エイヒレもだけど、ビールも他のものじゃ代用できない味だよね。
 ビールは大好物ってわけじゃないから缶1本で満足しちゃうんだけど、濃い味のおつまみにビールなんて、最高の大人のご馳走だわ。
 若い頃はビールの良さがあんまりわかんなかったけど、歳を重ねるごとに美味しく感じるようになった。調子に乗って2本目を飲むと、ただの苦い炭酸水って感じだけど。
 大人になるにつれ美味しいと思えるものが増えるけど、子供の頃美味しかったものがあまり好みの味じゃなくなるから、結局総数的にはプラマイゼロって感じかな。
 年齢に関わらず、いま美味しいと思えるものを食べられる幸せっていうのがあるからね。それを大事にしていこう。
 いまの人生で食べられる食事の数なんて、もうそんなにないんだしさ。
 というわけで、今日はお仕事頑張ったのでご褒美にエイヒレを買って帰ることにする。
 家で炙るのと炙りエイヒレだと、また味が違うんだよねー。エイヒレによって当たり外れもあるし。
 今回のは美味しいかな。あ、ノンアルビールのストックもなくなってるからそれも買って帰ろう、そうしよう。
 帰り道にスーパーに寄って、忘れないうちに缶ビールをカゴへ入れる。普段買わないものは先に確保しとかないと、うっかり買い忘れて悲しい思いをするお年頃なので。
 違う銘柄のを二本選んでから移動して、おつまみコーナーでパックのエイヒレも買う。
 せっかくだから夕飯はお祭りの屋台メシにしちゃえ。
 たこ焼きに焼き鳥。お、フランクフルトあるじゃん、最高。
 こんななにげない日常が幸せだって思える平和が、愛おしくてたまらない。

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