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【短編小説】1/31『並んで咲いた赤白黄色』

「どしたの? これ」
「ん? キレイだったから」
「えー、わー、ありがとー」
 花瓶どこだっけー、と彼女が納戸を探る。帰宅してすぐに渡した花束を飾るため。
 花貰っても嬉しくないって人がいるっての聞いたことあるけど、彼女は素直に喜んでくれるから贈り甲斐があるというか。
「あったあった」
 テーブルに花束を置いて見つけた花瓶に水を注ぎ、花束のラッピングを解いて花瓶に……活けようとして、入らなくて苦戦してる。しばらく格闘してあきらめて、こちらを見た。
 少し困り顔でこちらを見る彼女が可愛くて、季節になるとつい買ってしまうその花はチューリップ。
「前にもう少し口が大きいやつ、買ってなかったっけ?」
 俺の言葉に彼女が考えて、漫画だったら頭の上に電球が点いてそうなヒラメキ顔になった。
 可愛いなぁって思いながら、再度納戸に上半身を突っ込んで「あった!」なにかを見つけた。
 手に持つそれは、俺がさっき言った“口が大きい花瓶”だ。
「入った」
 とても嬉しそうにこちらを見る彼女を見る俺の顔は、きっとだらしなく緩んでる。
「春って感じ」
「ね。最近あんま、外でも見なくなっちゃったけど」
「確かに。でも可愛いから嬉しい」
 笑顔で花を眺める彼女の隣で、俺も一緒になって眺める。うん、やっぱりこの色で正解。
「赤白黄色で並んでると、なんか子供の絵みたいだね」
 彼女が笑いながら言った。
「ほんとだね。クレヨンで模写してみようかな」
「クレヨンなんてあったっけ」
「ない」
「じゃあ無理じゃん」
 他愛のない会話をしながら、楽しく笑う。やっぱりずっと、一緒にいたいな。
「これからも毎年買ってくるね」
 ほんのり未来をほのめかしたら
「期待してます」
 彼女はふふっと笑った。

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