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ナイフ

以下はマニラ在住時代エッセイの加筆です。

先日ビュッフェレストランでナイフが必要になり、通りかかったウェイターに言いつけると
「イエスマム☆」
と無駄にウィンクされました。何故ウィンクしたのか。
わからないまま時は過ぎ、そしてナイフは来ない。
やがて別テーブルでも、さっきの店員がまたウィンクしているのが見えました。
あきらめて(マニラでは常にあきらめることが大切です)今度はウェイトレスに声をかける。
ナイフと言ったら「ダイブ?」と返され心折れかかるも
ねえ、このシチュエーションで・・ダイブ、とか、言うわけないよね?
と実験的に諭してみると
「イエスマム!」
と異常に明るいスマイルを返されました。
それから彼女は
「You can say diving!
(あなたはダイビングと言うことができます!)」
みたいなことを言ってきました。
フィリピンで、相手の言っていることの意味がわからなくなったら(よくある)
話題を変えましょう。
私はもう一度
ナイフを持ってくるよう頼みました。
彼女はしおらしげにうなづき、しかし戻ってきませんでした(何故)。

巨大なレストランだから人材は豊富です。場所が広ければ店員数も多い。
ですが、基本的にフィリピンは店員が本当に多いのです。日本なら2人で回すところに軽く10人以上います(実話)。給料も責任感も割り算の結果です。
なので
この人でダメならあの人に頼み、
あの人でダメなら今度はそっちに頼み、
それでもダメならあっちに頼む
ことが何回でも可能であり、同時に
この人もあの人も誰に何回頼んでも無限にダメ、という可能性が無限にあるわけです。
私はまた別のウェイターを呼び、それでも反応がないのでさらに他の店員に頼む
ということを何度かくり返し、依然ナイフがないまま最初の時点から10分ほど経ったでしょうか。マジで頭に来た頃

ナイフが5本、続けざまに届けられる
という大スペクタクルが起きたのです。
こんなにナイフ…何切る………の
どの店員も誰ひとり、私の前の多過ぎるナイフを気にとめることもなく
曇り一つなくただ自分のナイフをおいて行きました。それが、もはやニーズに合ってないとしても。

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