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マンゴー


(以下はマニラ時代のエッセイの加筆です。つまり中身は10年くらい前の私です)

そんなにたくさんの国に行ったわけじゃないけど、その国独特のにおいは、空港から漂っている。日本は醤油くさいって言うし韓国はニンニク。アメリカはコーヒーの匂いがすると思う。
マニラ空港は、マンゴーのにおいがシマス!もしくはあれはドリアンなのかな。
マニラ空港に着くと「また戻って来てしまった。歯をくいしばって生きよう」と思うので(マジ)、私には「歯を食いしばる生活」がマンゴーの香りが象徴するもの。日本の人が
マンゴー大好き~、マンゴージュース飲みたい~、いいな~フィリピ~ン
などと言っているのを聞くともちろんムカつきます。
貴様!マンゴーのなんたるかを本当に知ってるか!フィリピンに来てみろ何もかもがマンゴーだ!全てがマンゴー味。メニューの全てがマンゴー!
マンゴージュースマンゴーアイスマンゴーチーズケーキマンゴータルトマンゴープリンマンゴームースマンゴーカクテルマンゴーパンマンゴーご飯マンゴー焼きマンゴー蒸しマンゴー餃子マンゴーハンバーグマンゴー弁当マンゴー汁マンゴーハウスマンゴージャズマンゴーCRVマンゴーステレオマンゴーマンションマンゴー兄弟マンゴー飛行機マンゴー学校マンゴーバーマンゴー物差しマンゴー差別マンゴー戦争マンゴー騒動マンゴー大脱走マンゴー刑務所マンゴー学部マンゴー学科マンゴー死

そんな、フィリピン、マニラを訪ねたいというアメリカ人が
「フィリピンて素晴らしい文化があるんだよね」
と言うので

「ないよ」

と期待感を抑えてやる(がっかりさせないため)。
「!!!!!!」(アメリカ人の心の声)
私「ほんとにないよ」
米「だって女の子はみんな優しそうじゃないか~(笑)」
私「どんな文化だ」
米「キミは何故好きでもない国にそんなに長く住んでいる」
私「ここ私の国じゃないもん」
という回答は、アメリカ人文化では理解されないかもしれない。
私たち日本人は、状況により「仕方なく」生きる。彼らは「選んで」生きる文化だ。

でも、この国(フィリピン)が良くなるとしたら、この国の人のためであって、この国が良くない国だとすれば、いちばん被害を受けているのはこの国の人である。
私が長く住んでるとか、関係ない。

でも一つ、マニラを訪れて、おススメできるものがあるとすればそれは夕焼け。
「夕刊フジ」みたいに燃える夕陽が、本当に真っ赤に染まる一瞬がほんの1、2分ある。
うっかりすると見逃してしまうけど、時々、それもちょっと嫌なことがあった日に、夕焼けの一分間に遭遇するとほら、すべての負の感情は焼かれて美しい灰になり、心の奥にちゃんと静かに落ちてくれる。
夕焼けの炎
これがマジきれいなんだけど、それって
「空気が超汚いからなんだって〜」
と言ったらアメリカ人は電話口で泣いてました。


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