妄想日記⑯もしも私がおじさまだったら。
目の前に一冊のノートがある。
昨日、ポストに放り込まれていたものだ。
それは一昨日コンビニで小夜に買い与えたそのものだった。
昨夜は半分読んで寝落ちしてしまった。
小夜は一日でノート一冊分を文字で埋めきっていた。
ノートを手に取り、ぱらぱらとめくった時にその現実を目にして怖くなった。決して綺麗とは言えない太い文字がびっしりと刻まれている。
あの可憐な容姿には底なしの想いがあふれているようだった。
少し、書くものを与えたことを後悔したが、そうを考えてしまった自分をすぐに恥じた。
それでは、小夜の両親や夫と同じではないか。
その時代から何十年と経過しているのに、この体たらく。
自分が情けなくなった。
また、小夜自身が生まれた時代でとても生きにくいのではないかと思った。
彼女はどうしたいのだろう。
ノートは今まで読んできた本についての考察が書かれていた。
原稿用紙はポストには入っていなかった。
そちらには何を書くのだろう。
とにかく、俺が今日やらなくてはいけないことはノートを含む文房具の追加だ。