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【ワンコイン品質工学】自動はんだ工程の最適化を読む

はじめに

こんにちわ熊野コミチです。

今回ははんだに関してのパラメータ設計事例を紹介したいと思います。

前回までの記事はコチラ

普段はyoutubeで仕事で使える統計学の解説をしているのですが、

初期の製品開発段階では、統計学を活用するためにはデータの数が足らないことが多く活用することが難しかったりします。
そのような場合には品質工学を活用することが望ましいです。

品質工学の機能性評価やパラメータ設計を使いこなせれば、少ないデータ数、実機を使わないテストピースで効率的な技術開発が可能となります。

しかしながら、品質工学は教科書で学んでも実用するのは中々難しいものがあります。
どうやったら自分の製品の機能を見出せるのかが分からないからです。

このあたりは場数を踏むしかないのですが、その場数のショートカットとして様々な事例に触れるというのは非常に有効です。
幸い品質工学会では過去の事例を無料で公開しています。

ただやはり論文でありますから読みづらいですし、品質工学の間口が広すぎてあなたの専門分野に直撃する可能性が低いという難点もあります。

という事で、ワンコイン品質工学では機能性評価、パラメータ設計といった品質工学のメインウェッポンに絞って分かりやすく解説いたします。

今回ははんだ(半田)についてです。
そう、基盤とかに端子をつけるあのはんだです。

ちなみに僕ははんだ付け苦手だす

半田付けの機能ってどんなものか分かりますか?
ちゃんとくっついていること?
基盤が動作する事?
いざ考えてみると分からないものです。
今回紹介する論文では、そのあたりをとても明快に解説しています。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/qes/1/3/1_25/_pdf/-char/ja

という訳で前置きが長くなりましたが、これからこの論文を分かりやすく解説していきます。

自動はんだ付け工程の機能性評価

背景

この論文の背景は以下になります。

従来,プリント基板のはんだ付け条件最適化の実験では,ブリッジや未はんだの欠点数などの品質特性を評価したり,あるいは,望小特性・望大特性のSN比や機能窓法で評価し,これらの不良が起きないような条件を見っける実験をして最適化を図ってきた。

つまり、プリント基板の半田付け工程は今まで不良項目や不良率などの観察を中心に行ってきたという事です。

このような不良項目を個別で見ていくことは、一般的な製造業ではよく見られる光景です。
別にいけないことのようには思えません。
しかしながら、品質工学的な視点ではこれはあまり喜ばれる状態ではありません。

なぜなら、モグラたたきになってしまうから。

モグラたたきが良くない理由は、一匹のモグラをたたくとそれをきっかけに別のモグラが出てきてしまうからです。

モグラをたたく、つまり特別悪い不良状態になった場合にはその不良項目以外目に入らなくなってしまいます。
そして何とかしてその不良を直そうとする。
色々工夫を考えて不良を直す。
やっとの思いで直った。
しばらくして、別の不良が出た。
よくよく調査すると以前の対策が原因だった。
よくある話です。

例えば、モーターを扱っているメーカーだとします。
モーターの音がうるさくてクレームになってしまった。
あなたならそのクレームにどのように対処しますか?
音が鳴らないように防音性があるクッション的な部材を巻き付けるとかしませんか?

確かにそうすることで音はしなくなるかもしれません。
ですが、もしかしたらその防音層のせいで発熱するという別のクレームが発生する可能性が出てきます。
よくある話です。

それではどうすれば良いのか。
品質工学では機能で考えれば良いとします。

モーターは電力を入力して、その大きさに比例して回転数が増す部材です。

モーターの機能

そしてモーターから異音がするというのは、入力した電力が回転に使われずに外に無駄に出て行っているという事です。入力したエネルギーは電力だけなのでその中の一部が音という形で無駄に漏れ出てしまう。

この異音がするという現象を、電力-回転数の関係で見てみると、

異音のロス分、回転数が落ちるという形で現れます。
つまり改善を行う際には、異音という不良項目に注目するのではなく、電力-回転数という機能に注目しようという事です。

機能に注目することで、ただひたすら電力から回転数への変換効率にだけ注目すれば良いという事になります。
この効率が上がるにしたがって、自然と様々な不良がなくなっていくわけです。
そしてそれは必然、発熱などの未知の不良も抑制出来るという訳です。

若干わき道にそれましたが、つまり半田付け工程においても欠点数などといった品質特性ではなく機能を考えて改善活動しようやと宣言しとるわけです。

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