幼馴染のAくんへ

新成人の皆様、本日はおめでとうございました。

私の成人式の思い出ってなんだろうなぁと思い返した時に、私の人間関係において「幼馴染」というカテゴリに唯一入っているAくんとの出来事が真っ先に出てきたので、その思い出を少し。

私の地元は都会から少し外れたベッドタウンのような片田舎でした。その自治体の中で最初6人しかいなかった同級生のうちの1人がAくん。小学1年生の時に出会い、一緒の班で登校、クラスも一緒で出席番号も近く、話す機会もなんだかんだ多くて気づいたら仲良くなっていました。

どちらかが学校を休んだらプリントを届けに行ったり、帰り道の途中で見かけたらお互いに声をかけてたわいもない話をしながら一緒に帰ったり、クラスが一緒になった時にはふざけ合ったりしていました。当時の記憶は朧げで、でもAくんのことは恋愛感情抜きでとても人として好きだったことは覚えています。

Aくんは凄く明るい性格ではあるけれど、いわゆるクラスの一軍にはあまり所属せず、かといってインキャ集団の中にも属さない、今思えば一匹狼のような、飄々とした人だった気がします。なかなかに我は強いし人への好き嫌いも激しい。初めは仲良さそうと思った人でも一回彼にとって気に入らない言動をすればそのままその人のことは一生嫌いになる、というのが彼のスタンスで、コミュニティも狭い印象を受けました。
インキャや容姿があまり整っていない人への嫌悪感みたいなものも(当時は若かったので…)それ相応に持っていて、クソダサ眼鏡もかけて太ってもいて、なかなかにドブスだったはずの私とどうして仲良くしてくれるのだろうと不思議に思うこともありました。

そんなAくんとは中学卒業を機に離れ離れに。私は隣の市の進学校、Aくんは昼に働きながら夜間の高校に通うようになって、元々学校外で会うこともなく連絡先も交換していなかったのでふつりと交流が切れました。

高校に入ってからAくんと会ったのは2回のみ。

1回目は、高校生の部活終わりかなんだかで帰りが遅くなったある日、最寄駅を降りて1人で帰ろうとした時、たまたま同じ電車に乗っていたAくんが「よっ!」と声をかけてくれました。
自分は中学の頃より更に鬱々としてインキャになっていたのにAくんは変わらない明るさで話しかけてきてくれて、その変わらない姿を眩しく思い、それと同時に、ちょっと綺麗めな私服で背もまた伸びて、原付を持っていて、全く良くはないけれどタバコも吸っていたAくんに大人っぽさを感じて、パッとしない私とのあまりの差に愕然としたのを覚えています。
原付を押して一緒に歩いて帰ってくれるAくん、私の家まで送ってくれてそこから原付で走り去っていった彼の姿と当時彼が働いていたホームセンターでの出来事やそこでの愚痴は妙に頭に残っています。

2回目は成人式の後に行われた中学の同窓会の時。大学に入った私はジャニオタになった影響もあって垢抜けることに注力していて、紺のパーティードレスを着て髪も染めてコンタクトデビューをしてメイクもして、それなりに見た目が変わった状態でAくんと対面したんですが、「変わった」「誰かと思った」「大人っぽくなった」と言ってもらえたことが本当に嬉しかったのを覚えています。高校生の時の出来事から、Aくんに人としての「差」を感じていた私にとっては、Aくんにそう言ってもらえたことで、先に大人の仲間入りをしていたAくんに近づけたようで、私も大人の仲間入りができ私も成人したんだ、とその時初めて自覚しました。
でもその一方で、立ち話程度の短い時間でも話す内容や話のテンポや口調は当時のまんまで、泣きそうなくらい懐かしかったことも覚えています。

あれ以来、Aくんとは会えていません。なんやかんや連絡先の交換もしなかったらしく、LINEの友達一覧に彼の名前はなくて、それ以外の連絡手段もありません。

Aくんへ
元気ですか?何してますか?結婚とか…してそうだなぁ…
あの頃チョコレート風味の煙草しか好まなかった君は今ではちょっとメンソールのきつい煙草を燻らせているんでしょうか。
あの同窓会の時、「今度一緒に飲みに行こう!」と言った口約束、まだ有効だといいな。
5年ぶりに、君とたわいもない話がしたいです。

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