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拘る

小学生の頃、自然学校という世間一般でいう林間学校のような約一週間山の中にあるロッジに寝泊まりするイベントがありました。
僕は人生で初めて親元を離れての寝泊まりだったため初日から食事も味がしないほどのホームシックとなっていました。
3日目あたりでお家に手紙を書いて送ろうというレクリエーションが開催され「とにかく早く帰らしてくれ!」という半ばSOSに近い内容の手紙を書いたことを覚えています。

無事に家に帰りほっとして迎えた夕食の食卓で嬉々としてイベントの思い出を話していた時、どうも父親の機嫌が良くないことに気づきました。
なぜかと尋ねると母は笑いながら
「父さんな、あんたからの手紙の出だしが『お母さん、お父さんへ』やったことがショックやったらしいんよ」
と言いました。
親父曰く「普通は『お父さん、お母さんへ』やろがい」らしいです。
くだらないことに拘るもんだと子供ながらに思いました。
しかし今思うと父さんがあまり子供に見せなかった"隙"のようなものが初めて垣間見えた瞬間だった気がします。


今日仕事で同僚から意見を出して貰った時に少し言いにくそうにしてたので「こっちの顔色なんて気にせず言ってごらんよ」と言ってやって飛び出した意見が、過去の自分が良かれと思ってやったことを軽く否定されるような内容で、その場では「確かにねぇ〜」なんておどけて見せましたが、内心今でもモヤモヤしています。
拘っている自分がいます。毛色は違えどあの頃の父の気持ちが分かったような気がします。息子にやられたんだからそれはそれは心中お察しします。改めてあの頃はすいませんでした。

とはいえ、そういうくだらないことに拘っている自分がカッコ悪いと思いつつも嫌いじゃない。血が通った人間なんですもの。拘ることこそ人間らしさなのではないだろうか。。
拘っていきましょう、とことんくだらなく。

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