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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

【感想】桃の園 ROUND.2「生存訓練」・ROUND.3「さくらとレッド」/ころころ大五郎

はじめに

この記事では桃の園第2・3話を読了した方向けに向けて書いております。
そのため、桃の園本編の描写に対する補足説明等は最低限にとどめております。
予めご了承ください。

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期待したいところ

生存訓練の一幕(2話)

生存訓練で最速で山頂から帰還したさくらに教師が「はじめてとは思えませんね」と声をかけたシーンで意味深な沈黙の後、「偶然です」とさくらが答えるシーン。
おそらく、学園に入学する以前に入山しているのかもしれない。
伏線であってくれると嬉しい。

主人公の支持者の存在(2話・3話)

2話では同級生のベビー・キャロル、3話ではなんとゴクレンジャーのレッド。さくらの目標や信念をあるがまま肯定してくれる存在がなんとふたりも増えた。
正論ながら少々毒気の強めなシエルとさくらの態度を咎めて退学を迫る担任教師など、物語の進行に歯止めをかけるキャラばかりだったのでこれは純粋に嬉しい。

生き延びねばならない理由(3話)

さくらが主人公である必要性にようやく言及されそうなラスト。
大怪我を追いながらもさくらを庇い、さくらの夢に希望を見て、さくらの存在を全世界を平和に導く存在であると力強く肯定するレッド。
いままでのストーリーと比較しても最もヒキが強いラストになっただろう。

気になったところ

主人公の過去(2話)

女の子らしい服装やお淑やかな振る舞いを母親から求められていたというさくらの過去。
女性らしさという押しつけをされて生きてきたことがわかるが、ジェンダー後進な環境にばかり縁があって気の毒だ、くらいしか思うことがない。
この過去の回想とレッドのポスターを外すか葛藤するシーンは2話に必要だったのか疑問が残る。

生存訓練の描写(2話)

18ページ中4ページも割いて描く必要があったのか甚だ疑問な生存訓練。
さくらの身体能力を描きたかったのかもしれないが、ピンクの役割はサポートと前回話していたのに突然の野外訓練をする意味とはなんなのだろう。
あと日本に生息していないゴリラが極錬山にいるのも気になった。
作者はペットブームで日本に持ち込まれたアライグマが野生化して害獣扱いされている問題をご存じないのだろうか。

主人公の疑心暗鬼ぶり(2話)

警戒心が強いのはいいことだが、物語を牽引する主人公がさまざまなことに疑心暗鬼を生じているのは気になった。
特に2話のベビー・キャロルがかけた応援の言葉に悪意は感じられず、
むしろ味方のいない異端者であるさくらに対する善意に満ちていたのに
「口車に乗れば退学させられてしまう」とまで否定的な姿勢を見せたのは
違和感があった。

密談の場所(3話)

レッドが一般市民から注目を浴びてしまった直後のシーン。
事前に落ち合う場所とか決めてから行動したほうがいいのでは。
時間をくれと言うだけ言ってそのまま現場から離脱するのはディスコミュニケーションではないか。

レッドの一人称(3話)

重箱の隅をつつくような指摘で申し訳ないが、レッドの一人称の表記揺れ(オレと俺)が同じ回で発生しているのが気になる。
セリフの関係で一か所を漢字表記にしたのだと思われるが、
せめてその回だけでも統一して欲しい。

囲まれています(3話)

囲まれていません。

総評

世界観・登場人物・エピソード、それぞれの掘り下げが粗く浅い。

キャラクターの掘り下げが浅いと物語がどんな展開を迎えても他人行儀になってしまう。主人公のさくらをはじめ、かなりエキセントリックな人物が多い本作は感情移入がしづらい。
それもそのはずで、この世界の常識なんて我々は知らないからである。
常識が異なれば共感も反発もしにくい。なので知らん世界のまだよく知らんひとらの危機も活躍もどうでもいいのである。
序盤で情報を秘匿し、読者が世界観に慣れたタイミングで実は常識が現実世界と全く異なっていたことを明かす作品などはあるが、その場合は日常として浸透している異常を際立たせる描写が成される必要がある。

例えば、この作品ならば男性もピンクの衣服を着たり、アクセサリーを身に着けたりするのにゴクレンジャーではピンクは女性という規則が厳格に定められている、他の組織では女性も活躍しているのにも関わらずゴクレンジャー内の唯一の女性であるピンクがサポートに徹しているなど。
我々はこの世界の住人ではない以上、なにがこの世界の日常でなにが非日常なのか知りようがない。
したがって、作中でその相違点を示してもらわねば異常も異常と受け取ることができない。

上記の気になったところに挙げたシーンも描写としては不足しているところがあるか、挿入する箇所が違えばよい効果が出そうなものも多い。
さくらの過去シーンなどはレッドに「応援している」と言われた直後に入れば、夢を否定され続けてきたさくらの呪われた過去が最も憧れていた人物に肯定されたことで呪いが解けるというカタルシスを作り出せたかもしれない。

また、今回に限ったことではないが本作は情報の不足が著しい。その不足ぶりと言えばさくらたちの年齢すらわからないほどだ。あとはピンク育成学校がある国はそもそも日本なのだろうか。同級生が国際色豊かな名前が多いため、もしかすると日本ではないのかもしれない。
とにかくわからないことが多い。

細部の粗が多く、丁寧さに欠ける印象がさらに強まった2話と3話だったが、4話以降からはさらに話が展開することを祈って9月3日を待ちたい。


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