見出し画像

すこしヘンな空間

23時の丸の内線。友人との飲み会を終え、少々酔いが回っていた僕は、空いている席に腰を下ろした。終点の方南町まで座っているだけでいい。バッグからおもむろに本を取り出し、読むというより眺めていた。

夜遅くとはいえ、吊り革に手を伸ばす人もまばらにいる。心なしか、目の焦点が定まっていない人が多いように感じる。同じように、飲み会帰りなのだろうか。


四ツ谷駅。隣に30代か40代くらいの男の人が座った。僕は普段よりやや散漫な集中力ながらも、それなりに意識を保ったまま、文字の連なりをただ追っていた。


一斉に、新宿で大勢の人が出口へ向かう。車内は音が止み、閑散とした空間へ移り変わった。


その後も少しずつ人が減り、中野坂上に。終点までは残り3駅、時間にすると大体7分といったところだ。


ふと、同じ車両には数えるほどしか人がいないことに気がついた。優先席にはほとんど誰もおらず、角の座席でさえ空きが目立つほど。


周りから見てみると、ちょっと変わった空間。 いたるところに空席がある中で、二人は隣り合っている。

移動した方がいいのかなと思うのだけれど、切実に場所を変えたいかと言われるとそうではない。かといって、留まっているのも少しヘンな感じがしてしまう。

結局、動くことなくそのまま終点に到着。隣り合っているのは、二人だけになっていた。なんとなく、7分よりはやや長い時間に感じた。


混雑している時には、このような違和感はまったくないから不思議だ。


はたまた逆に、周りがすべて埋まっているのに、自分の隣だけ空いているのも、落ち着かない。「なんか変わったことしてるのかな」とか思って、自分の身だしなみを確認したりしてしまう。


人間は、まんべんなく、出来るだけ均等に空間を埋めるのが、心地良いのだろうか。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?