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#25 母の「いつでも帰っておいで」は偉大。

私がこの言葉を初めて母に言われたのは、社会人三年目の頃でした。

就職が決まって家を出ると、もう遅い時間にコソコソ帰宅しなくてもいいし、女の子があんな遅くに酔っ払って・・と母に小言を言われることもなくなりました。一人暮らしはとても快適でした。

でも仕事はそれなりに大変で、社会人三年目、私はついに仕事で大きなミスをして、たくさんの人に迷惑をかけ、ひどく落ち込みました。

会社で上司と面談をして何度も謝罪し、時が戻ればいいのに・・と思いながら電車で帰宅し、この世の終わりみたいな足取りで、駅から家までの道を歩きました。

もうちょっとで家だけど、帰っても誰もいないし、明日も仕事には行かなきゃいけないし・・もう嫌だ!と絶望的な気持ちになったとき、ふと、母に電話してみようと思いました。

普段は電話が苦手なので、私からかけることは滅多にありません。なにかあったのかと心配させるかな?など考えましたが、なにかあったから電話をかけるのだと思い直し、思い切ってかけてみました。するとやはり、母は心配そうに、「どうしたん?」と電話に出ました。

「仕事でミスしちゃってさ〜・・」と話し始めたら最後、あれよあれよという間に涙が止まらなくなりました。まだ帰宅途中にも関わらず、大泣きしながら家までの道を歩きました。

母は一通り話を聞いてくれたあと、「仕事のことは母にはようわからんけど、ミスをしてしまったなら誠心誠意謝って、また頑張るしかないねぇ。でもね、あなたが頑張っているのを、見ててくれている人は必ずいるとよ。」と励ましてくれました。そして電話の最後に、この言葉をかけてくれました。

「まぁ、いつでも帰ってきんしゃい」

あぁ、私には逃げる場所があるのか、と思いました。もうダメだ、前に進めないと思ったら、後ろに下がる道もちゃんとあるのだ、と。

そして不思議なことに、いつでも後ろに下がっていいんだよと言われたら、なんだかまた「前へ進んでやろう」という気持ちが湧いてきて、次の日もなんとか会社に行くことができました。

こんなエピソードを、昨日「着飾る恋には理由があって」というドラマを観ていて思い出しました。川口春奈さん演じる主人公が、故郷の島を離れる時に、お母さんが「いつでも帰っておいで!」と叫んでいました。温かい言葉だな、と思いました。

あぁ、早く世の中が落ち着いて、安心して実家に帰れる時が来ますように…!

こまつまい

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