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新しいはじまりの、はなし。

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ここまで辿り着くのに、いろんなことを手放した。 やっと、やっとだ。しびれていた指先の感覚を取り戻すように少しずつ自分が帰ってきた。 かわいそうだったね、大変だったね、と誰かに慰…
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新しいはじまりの、はなし。❘          最終話。

前回までのおはなしは、こちら。 暮らしのリズム。 テレワークの生活にも、少しずつ慣れてきた。また、おかげであっという間に、家の中も片付いた。今までの引っ越しで最速かも知れない。  もともと、タイへ行くために、物を処分したり、片づけたりしていたから、新しい家に持ってきたものは最小限のものだけ。テレワークの合間に、ちょこちょこ片づけられたのは、ラッキーだった。やっぱり、身の回りが片付かないと、ふわふわして、落ち着かないものだ。粗大ごみシールを貼られた家具たちは、ご愛敬。もう少し

休職のご挨拶

 本日、私事ですが、いつもお世話になっている大切な皆さんへご報告をひとつ。  この4月より、主人が海外赴任することになりました。それに伴い、配偶者同行休業制度というありがた〜い制度を使い、私も子供を連れて帯同することとしました。 行き先はタイ(バンコク)、期間は2年間です。  現在の部署では、昨年9月からG20観光大臣会合の開催準備に携わらせていただき、また観光分野における女性活躍をどう進めていくか、という大変やりがいのある(個人的にもかなり燃えるテーマ!)仕事にも巡り合

新しいはじまりの、はなし。| vol.4

年度の始まり。 4月1日。私は、まだここにいる。 本当なら今頃は、バンコク行きの飛行機の中、雲の上の人だっただろうか。  部署異動するのも何だからと、人事の計らいで、引き続き、同じ部署に置かせて貰えることになった。仕事は、3月末に後任へ引き継ぎしたものの、しばらくは伴走することに。ありがたいことだ。    廊下で、同僚たちとすれ違うたび、 「あれ⁉︎どうしたの?」と、おばけにでもあったかのように驚かれ、声をかけられた。  また、わたしの髪色が、それはもう、すっかり休職モードだ

新しいはじまりの、はなし。| vol.3

お別れの朝。 3月31日、引っ越しの朝。早々に朝食を済ませて、息子を保育園へ送っていった。  卒園式は、すでに3週間前に終わっていたけれど、卒園後も年度内は通わせてもらえるのが通例だった。本当にありがたい。  このコロナの影響で卒園式もぎりぎりまで、どうなるか分からなかったけれど、式次第を短縮するなどの配慮をし、式を開いてくださった。  その後に企画していた謝恩会は、私たち保護者の判断で泣く泣く開催を取りやめたけれど(いつか落ち着いた頃に、同窓会をしようということに)、一人

新しいはじまりの、はなし。| vol.2

これはこの春、私にあった出来事。 かわいそうだったね、大変だったねと誰かに慰めて貰いたいわけではない。 それでは、決して満たされないこと、解決しないことを知っているから。 書き綴るのは、私自身が過去に光をあて、そしてすべてを手放すため。 これは、私の新しいはじまりの証し。 前回までのおはなしはこちら。 ーーーーーーーーー 優しさに触れて。 家が決まった。その連絡を夕方に受けて、急ぎ学区内の小学校と区の学務課の担当へ電話連絡をした。国内での入学準備や手続きは何ひとつしてい

新しいはじまりの、はなし。|  vol.1

 東京は久しぶりの雨。夜半から降り始めた雨の音がとても美しくて、静かで。ふとんに包まりながら遠くに聴こえる雨音をぼんやり聴いていた。あぁ、やっとそんな気持ちの余白もできてきたんだなと思った。   つい週数週間前、春からバンコクへ行くこと、しばらく休職することをここで報告したその矢先だった。当然といえば当然だけれど、タイへの渡が時期未定で延期となった。いつもは楽観的な私も今回ばかりはさすがに参った。どこを向いて、何を拠りどころに、どう進んでいけばいいのか。暗く深い海の底に