句集「日々、これ日常なり孤独なり（五）」五十句
201 足先に冷えを感じて庭掃除
202 マウントを続ける性の空しさよ
203 決めるのは好きか嫌いかそれでいい
204 カネ大事働き甲斐はより大事
205 けっきょく最後に笑うのは誰だ
206 勇気出すとき血の涙が流れる
207 すぐ顔に出せる自由が欲しいだけ
208 聖なる夜ひとりで観るや時代劇
209 イブ過ぎて正月支度の忙しさ
210 陽だまりで洗濯干すや冬休み
211 大そうじ探し物を見つけたり
212 除夜の鐘時代と共に失せにけり
213 積ん録のルパンの娘おもしろい
214 年の瀬を感じられずに時を越す
215 新年を迎える蜘蛛に在処なし
216 少年が朝から走る大晦日
217 彼が居て私も居る今それでいい
218 ロックするそれは音楽だけじゃない
219 貪欲に生きていたいからミーハーだ
220 誰のためでもないそれはマイウェイ
221 デジタルの年賀華やぐエスエヌエス
222 辺境の国にヘイトの嵐吹く
223 正月の夜に観るのはドラえもん
224 気がつけば国家と民族同化せり
225 御節飽き大食い動画見る我が家
226 日溜りに頭覗くや冬蜥蜴
227 仙人掌が俄か千手の御振舞
228 バッテリー枯れて水差す初出勤
229 屠蘇交し成人祝う父娘かな
230 見かけだけ白眉となりし五十路かな
231 写メをして脳内メモリ補完する
232 送電のトラック駆けるや流れ雲
234 泡沫の恋でも僕はかまわない
235 初雪の骨身に滲みる受験かな
236 暖冬で花粉狂いし涙雨
237 体内を尋ね歩くや内視鏡
238 傍輩と酒酌み交わすゼミの宵
239 雲塊を二頭の海豚泳ぎたり
240 春風邪にコロナの撒うや街閑か
241 テレワーク自宅に居場所無かりけり
242 あの頃はただ待つだけで恋だった
243 非常時の別れや出会い閑かなり
244 五輪の灯風邪と共に去りぬかし
245 今朝並んでマスクが買えた幸せ
246 ホームには並ぶ人さえ疎らなり
247 それぞれの志村けんとの笑いあり
248 リモートで太る身体に罪はなし
249 家に居て思考は世界を駆け巡る
250 画面越し届け合うのは気配なり
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