Z|ザクロ(柘榴)【或いは東尋坊を舞台にした告白】 |野草の世界で学ぶ、持続可能な食と生活のAtoZ
Zakuro
フトモモ目ミソハギ科ザクロ属
日本国において、ザクロほど物騒なイメージがつきまとう果実はありません。
『火曜サスペンス劇場』では刑事さんが「転落死体の無残に潰れた顔」をこれに喩え、昔話では人間の子どもをさらって食べていた鬼子母神にお釈迦様が「人の肉に似た味だから代用食とせよ」と勧める。そういった果物です。
しかし野草ハンターなら気にしない。
食べられるものは正義-ジャスティス-です。
ザクロはツブツブした小さな実が中にぎっしりと詰まっており、その粒の内部は半分タネ。お世辞にも食べやすいとは言えません。
そのため、木を育てても実を収穫しないお家が散見されます。
俳句の島谷先生(葛の項で登場)に引率されて訪れた日本庭園でも、たわわに実ったまま未収穫でした。
ぎっしりとルビーの並ぶ宝石箱が如く果実は、時価数十億円の錯覚(ロマン)にあふれ、手中に収めたくなる魔性の美しさなのですが。
千葉県香取市に、浅間台スポーツランドというジムカーナ場があります。
夏はカブトムシが取り放題、秋にはザクロの木に実がなるという、夢のようなイナカバンザイ施設です。
ここでもザクロは、毎年のように果実が冷遇されていました。その存在に誰も目を留めやしない。夏場、観覧席の屋根にへばりついているカブトムシに騒いでいたオジサンたちですら、ザクロの実にはちっとも関心を示さないのです。
なんとももったいない話ではありませんか。
ならばと、夏から目をつけていた実を秋に一つ失敬し、種をペッペと地面に撒いてきました。
これぞ植物としての正しい終着駅です。
昨今では、海外セレブが美容と健康のためにこぞってザクロジュースを愛飲しています。
コンビニないしドラッグストアでザクロジュースのブリックパックを販売している傍ら、社会には未収穫の果実がゴロゴロとしています。
ジュースでお味が気に入ったら、次はハンターとして、お近くの果実をまるごとゲットしていただきたい次第です。
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