見出し画像

【野菜はなぜ育つのか③】とっても大切な窒素の循環

料理人からオーガニック農業へ転職をして7年目。すっかり農業の魅力にハマってしまいました。

今日は最近になって学習していることについて執筆します。

※この記事はOrganic Labo KOMAMEYAのホームページに掲載しています。

※記事を音声で聴きたい方はこちらです。


野菜が育つためには栄養が必要です。その中でも重要になってくる必須元素と呼ばれるものがある。現在、必須元素には17種類ありますが、その中で最も重要になってくるのが9種類の必須多量元素です。
今回は必須多量元素の中で最も注目すべき”窒素”について考察していきます。

なぜ窒素が重要なのか

野菜の生育に不可欠な窒素(N)。肥料三要素とも呼ばれ、リン(P)とカリウム(K)と並び最重要の栄養素とされています。
では窒素は野菜の生育にどのような効果があるのか考えてみましょう。

野菜が生育するためには、細胞を作るためのタンパク質が必要です。野菜の葉緑体によって、太陽の光から光合成を行い糖とデンプンを作り出す。そのデンプンを利用してタンパク質を作り出します。このタンパク質を生成する時に必要になってくるのが”窒素”です。

つまり窒素がなければ、光合成によって作られた糖やデンプンが野菜の生育に結びつかず、細胞を生成することが出来ません。野菜は成長できなくなってしまうんですね。

空気中にはたくさんの窒素がある

では”窒素”はどこにあるのでしょうか?
実は窒素は私たちの身の回りにたくさんあります。私たちが空気と呼んでいるものは、大部分が窒素です。その割合は大気中の約78%と言われ、地球上の安定した気体として存在しています。ちなみに酸素は約21%となっています。

しかし、この大気中の窒素ガス(N 2)を野菜は吸収することが出来ません。野菜などの植物は空気中の窒素ガス(N 2)をある状態に変換したものを根から吸収しています。

その理由を考えてみましょう。

野菜が吸収できるのは無機態窒素

野菜が成長するために必要な窒素ですが、そのままでは栄養分として吸収できません。では、植物や野菜はどのような形で窒素を吸収できる状態にしているのでしょうか。

土壌中の窒素には大きく分けて2種類の状態がある。それは有機態窒素無機態窒素です。
この2種類の窒素のうち、野菜が直接吸収できるのはほとんどが無機態窒素の状態である。

無機態窒素にはアンモニア態窒素硝酸態窒素と呼ばれるものがあり、これが野菜に必要な栄養源となってくる。ということは、その無機態窒素がどのように作られているのかがポイントになりますね。

無機態窒素ができるまで

無機態窒素が生成されるには大きく2つのルートがあります。

1つ目は、空気中の窒素を植物や微生物が土壌に取り込む方法です。これらが空気中の窒素をアンモニア態窒素として土壌に取り込んでくれる。そして後に硝化菌(亜硝酸菌)によって硝酸態窒素に変換されます。

こうして微生物の働きによって、野菜が吸収できる無機態窒素が生成されていきます。

2つ目は、有機物を由来とするものから生成される無機態窒素です。
有機物とは、地上動物や虫たちの亡骸・落ち葉などのことになります。これらの有機物は高分子窒素と呼ばれるタンパク質があり、糸状菌(カビ)などの微生物がアンモニア態窒素から硝酸態窒素へと分解していく。

こうして野菜が吸収しやすい状態へと変換され、細胞を形成するのに必要な栄養となっていくんですね。

野菜の栄養は微生物のおかげ

以上が野菜の必須栄養素である”窒素”のできるまでとなります。細かく説明するとかなり難しいですが、おおまかな流れを把握するには充分だと思います。

窒素は空気中や土壌に存在している。しかし、たくさんある窒素はそのままでは野菜の栄養源にはならない。そこには微生物や糸状菌などの生き物の働きによって作られている。

これを知っておくと、野菜がなぜ栄養豊富な食材なのかを理解できる。私はそう感じます。

目には見えないところで、生き物たちの活動が循環している事実。
その環境を良いものにすることが、持続可能な美味しい食卓へとつながるのではないでしょうか。


この記事が参加している募集

転職体験記

料理への想い。食材への感謝の気持ち。 楽しく緩く、真剣に食べ物と向き合いたい。 そんな思いで執筆しています。 「いただきます」から明るい未来を創造する。その活動を模索して行きます。