野球部の坊主のあいつを許すか許さないか(小山の戯言)

こないだ久々にライブハウスへ行った。八十八ケ所巡礼というバンドのワンマンライブ。
今となってはかなり有名だが、8年前くらいに行ったライブではもっとアングラ感強めだった思い出がある。

高校から音楽系の専門学校に通い始めた頃は狂ったようにライブハウスに通っていた。バンドマンが好きなのはもちろん、その場の空気感が好きだった。
イケメンバンドの顔を拝みに来た黄色いファン、はしゃぎながら喋る男女グループ、俺みたいに1人で来るオタクみたいなヤツ、何年も前からこのライブハウスに通っているであろう初老のおじさん、不良みたいな格好で酒を飲みタバコを吸い地蔵する客、おかっぱ頭で泣きながらライブを見るサブカル女子。
あげればキリがないほどに個性で溢れるその空間が、一つの音楽でまとまっていく様がなんだか好きだった。

話は変わるが、バンドマンになりたかった高校生の頃の俺はライブやイベントごとに携わりたいと思い、文化祭実行委員というものを大真面目にやっていた。
「クラスでお化け屋敷をやるからその準備を夏休みに行う」
そうクラスのみんなに伝えたが、夏休みにちゃんと教室に来てくれたのは固定化された数人だった。
その固定化された数人で作り上げたお化け屋敷は見事に大盛況。文化祭の最後に発表された優秀賞に選ばれた。

『優秀賞3年6組の代表者は壇に上がってください!』と司会は呼んだ。
”うおおハズカシィけど上がるか...!!”と意気込んでいたら、野球部グループが「お前上がれよ〜」とはしゃぎだし、訳のわからない坊主の男が壇に上がった。
「頑張ってよかったです!!」
大声で言う坊主。かっこい!と黄色い声援を送る坊主の彼女。盛り上がる体育館。他のクラスの人たちも「すげぇ!」と言っていた。

その瞬間に、

「バンドマンになりたかったけど、やっぱり俺は裏方だよなぁ」

と悟った。

そいつのおかげで専門学校に進み就職出来たのだから、今となっちゃありがたい存在である。

バンドマンだろうが、野球部の坊主だろうが、この世界には主人公タイプの人間が確かに存在する。
飲み会で場を掌握出来るアイツも、自分の話を繰り広げてみんなに謎の共感をもらうあの子もそう。でもバンドには客がつかないと主人公にはなれないし、あの野球部の坊主も俺が居なければ脚光を浴びることもなかった。

それなりに年を重ねて気付いたけど、綺麗事だと思っていた言葉「自分の人生では自分が主人公」って言葉が本当にそうだと思ってきた。
人を応援する、人のために何かをする、人の支えになるのだってモブのやることじゃないんだよな。なんてことをこう長々とまとまりもなく書いてしまった。
八十八ケ所巡礼のライブのMCが妙に優しくて、感動してしまったからこんなこと書いてる。 とにかく要約すると、野球部の坊主のことはもう許そうって話です。


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