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アイナナしんどい。でも沼る。

スマホアプリのアイドル育成ゲーム【アイドリッシュセブン】
略してアイナナ。
そのアプリを原作としたアニメシリーズをこの度初めて視聴した。

私はゲームもプレイしておらず、現在配信されているアニメ3期まで視聴しただけなのだが、完全に沼。

ただ「アイナナ」に関して検索すると必ずと言っていいほど付いてくるワード「しんどい」
私はこのワードに激しく同意する。アイナナはしんどい。しんどすぎて、2期を視聴し終わった後、3期の視聴を渋ったほどだ。

しんどいのに沼る、そのしんどさと魅力を私の解釈で書きたいと思う。
なおアニメのみ2期までだけの情報しかないので、悪しからず。

以下、アニメタイトルを「アイナナ」、グループ名を「アイドリッシュセブン」と表記する。

ハマったキッカケ

何かキラキラした感じの青春っぽいアニメが観たいなと思い立って、動画配信サービスを漁っていたところ、アイナナが目に留まった。

元々ゲームはやらないのでどんなストーリーかも、今もゲームの配信が続いていることすらも知らない状態だった。
ただ私の好きなモーニング娘。のメンバーの中でこのゲームが流行っていた時期があり、ブログやラジオなどでしばしばメンバー間で話題に上がっていたことを思い出したのだ。

メンバー達は当時その魅力について「ストーリーがリアルすぎて共感が止まらない」というようなことを話していた。
現役バリバリでアイドルとして活動しているメンバーがそう言うのだからよほどリアルに描かれているんだろうなと思った。

視聴を始めてからしばらくは、ヌメヌメと動く独特のダンス映像や声優さんの歌唱に失礼ながら違和感を覚えていた。
しかし次第に慣れていき、気づいた頃には沼にハマっていた。

魅力①
キャラクターのバランス

このアニメのメインキャラクターであるアイドルグループ「アイドリッシュセブン」のメンバー7人のバランスがとにかく良い。

高校生でありながら冷静沈着で高い分析力をもつ和泉一織。
優れた表現力を持ちメンバーを後ろから支える最年長の二階堂大和。
明るいムードメーカーかつ小柄でありながら性格は兄貴肌の和泉三月。
無愛想で不器用ながらダンスが上手い天才肌の末っ子四葉環。
温厚かつ上品でいて最高のバランサー逢坂壮五。
北欧系ハーフで抜群のビジュアルであり常にメンバー想いな六弥ナギ。
抜群の歌唱力と人を引き付ける天性のスター性を持つ七瀬陸。

実際にこんな布陣のアイドルグループがいたらそれはもう無敵やん、と言ってしまいそうなほど、それぞれの優れた武器で全方位を固めている。

しかも全員がそれぞれ違った魅力を持ちながら、絶妙なギャップをも併せ持っているのだ。
アイドル好きにとってはそれはそれはもう堪らない。

魅力③
メンバー達の関係性

アイドリッシュセブンのメンバーには悪人が居ない。多少の諍いはあるものの、その根底にあるのはいつもお互いに分かり合いたいという想いだ。
それぞれのやり取りの中でメンバー全員が互いに想い合い、切磋琢磨する様子が垣間見える。

唐突だが私はBE:FIRSTを生み出したボーイズグループオーディション「THE FIRST」が大好きだった。
ライバル同士であるはずの参加者達がお互いに切磋琢磨し、同じ方向に向かって共に邁進する姿に心打たれた。他の参加者の成長を喜び、惜しみなく助け支え合う姿は見ていて本当に気持ちが良かった。

アイドリッシュセブンのメンバーの関係性はそれに似ている。
互いの長所を称え、短所を受け入れ、助け合う姿が常に描かれている。

アイドリッシュセブンのメンバーに聖人も超人も神様も居ない。
強さと弱さ、光と闇を抱えながら、メンバー同士で高め合う様が本当に心に響くのだ。

また、三次元でボーイズグループやアイドルグループを推している人は特に分かると思うが、グループのメンバー同士が仲良さげにわちゃわちゃ絡んでいる様子こそ至福。尊さの極み。溢れる多幸感。

そのわちゃわちゃ感もアイドリッシュセブンでは楽しめる。

個性の異なる7人の中で、特に仲のいいメンバーが居たり、誰かに対しては強気なのに別の誰かには弱音を吐いたり。兄貴ポジションや弟ポジション。そういった関係性が何気ないやり取りの中で垣間見えるのがたまらない。

魅力②
楽曲がとにかく良い

元々私はこの手のキャラソンやら、声優さんが歌ったり踊ったりするイベントにも興味が無かった。ちなみに昨今ヒット作を連発しているボカロ曲なども有名どころをたまに聴くようになった程度だ。

なので実際のところ楽曲やライブシーンにはさほど期待はしていなかったのだが、これがどうしたものか、めちゃくちゃ良い。

作曲者を調べてみると、複数のジャニーズグループに楽曲提供している方々や、AKBグループに提供している方々など華々しい経歴の方がずらり。
あいにく作曲家には詳しくないのだが、なんだか戦闘力が高そうなことは分かる。

実際のアイドルグループの曲を作っている方が多く関わっているのだから、普段アニソンやキャラソンに関心が無かった私にもバシバシ刺さったのも必然だと納得した。

これはアニメの世界線から少し離れるが、同アプリ上では、大物プロデューサー小室哲哉さん、いきものがかりの水野さん、ヒャダインこと前山田健一さん、スガシカオさんなども楽曲提供されているとのこと。

スガシカオさんが作曲された「マロウブルー」は本当に名曲。

他の音ゲーやアイドルアニメを知らないので比較することはできないが、アイナナの曲作りは本気なのだと感じた

しんどさ①

重すぎるシナリオ

アイドル育成ゲームでありながらユーザーからは「メンタル育成ゲーム」とまで呼ばれるほど、アイナナは視聴者の精神をえぐってくる。

これこそがアイナナの神髄だとは思うのだが、その原因はあまりにも重すぎるシナリオにある。

アイドル育成ゲームが原作なのだから、ある程度の困難が襲うことは当然予想していた。
ファンがなかなか増えなかったり、メンバー同士の衝突があったり、ライバル事務所との争いなどがあるんだろうなぁ、と思っていた。

当然そのような困難は訪れるのだが、そんなものはアイナナのしんどさのほんの爪の先程度でしかない。

まずメインキャラクターのほとんどがかなりヘビーな過去や境遇、トラウマを抱えている。
辛い過去を持っているメンバーがグループに一人いるだけでも、十分にストーリーとしては山場となり得るのに、アイドリッシュセブンのメンバーはほとんどが何らかの闇持ちなのだ。

しかもその弱みを容赦なく突いてくるような事件が次々に起こる。
それにも加えて大きな挫折や衝突、妨害、バッシング、など。
一難去ってまた一難どころか、一難去る前にまた一難二難、というような状態だ。

仮にこれがひたむき前向きポジティブキャラだらけのグループであったとしても、安易に闇落ちしてしまうようなヘビーな展開の連続。
アニメが2期、3期と進む度にその重さは増していく。
1期のうちにすっかりメンバーに心掴まれている視聴者のメンタルは、その重たい展開にボッコボコに殴打されていくのだ。

それがメンタル育成ゲームと呼ばれる所以だ。

しんどさ②
伏線がえぐい

アイナナのシナリオはとにかく伏線がとんでもない。

キャラクターのほとんどが闇を抱えていて、全員がそれを隠しているのだから、それを匂わせる伏線はもちろん随所に描かれている。
それだけでもかなりの数の伏線を置くことになる。

キャラクターのさりげない立ち振る舞いや、何気ない言動が後の展開の伏線になっているというようなことが多くある。

後になってからあれが伏線だったと気づくようなものもあれば、絶妙に匂わせて視聴者になんとなく不穏な気持ちにさせるものもある。

一つ困難の壁を越えたと思っても、一方でキャラクターがぽつりと発する言葉や浮かない表情がさりげなく描写されていたりする。
本当に上手い。

シナリオのとんでもない重さに加え、えげつない伏線。
これは本当にアプリゲームが原作なのだろうかと疑ってしまうほどだ。

だって無料でダウンロードできるアプリでしょ?おかしいおかしい。
アニメ用のオリジナル書下ろしなのか、そうでなければ劇場版3部作用に作ったんじゃないのか。

ところが調べてみるとアニメはゲームのシナリオがほとんど忠実に再現されているようで、そのシナリオの素晴らしさにもう唸るしかない。

そんな訳で常にありとあらゆる謎や伏線を張ってくるものだから、アイナナ視聴者は次にどんな展開が訪れるのかとハラハラしながら視聴を進めることになる。

あの発言はもしかしてこういうことなんじゃないか。
こういう展開になってしまうんじゃないか。
それが実際は何の伏線でなかったとしても、他に伏線がしっかり張られすぎているせいで邪推してしまうのだ。

それでいてキラキラと眩しいライブシーンも織り込んでくるもんだから、そのひと時の光が救いになる。絶妙な緊張と緩和だ。
これによって視聴者は半ば中毒のような感じでアイナナの世界から離れられなくなってしまうのだ。

ワクワクというよりはソワソワする。
先のストーリーが気になるのに怖くて進めない。でも気になる。
それがアイナナのストーリーを追うしんどさだ。

二つの意味でのしんどさ

「しんどい」という言葉はいわゆる「辛い、疲れる」という意味の他にも、いわゆる「推しが尊い」という場面でも使われる。
そしてアイナナはどちらの意味でも「しんどい」アニメだ。

アイナナは良くも悪くもリアル過ぎるのだ。

前述したようにアイドリッシュセブンのメンバーはとにかく魅力的。
聖人君主ではなくて、ただただ理想的な完璧な人物じゃない点が良い。
キラキラした顔を持ちながらも、弱い部分や闇も持っている点がしっかりと描写されていることでより人間味が増している。

誰も彼もを浄化してしまうような神様のような存在も居ない。
現実の人間関係でも起こりうるような行き違いや衝突や悩みが、視聴者の共感を得る。
なんやかんやで上手くいくだろうという安心感が、いい意味で無いのだ。

そういった面で、アイドリッシュセブンがあたかも現実に実在するんじゃないかと錯覚してしまうリアルさがある。
アイドリッシュセブンを応援する気持ちが、三次元のアイドルを推しているような気持と重なってくるのだ。

アイドルを取り巻く世間の声もリアルに描かれる。
メンバー間の人気格差やSNSでの誹謗中傷。他グループのファンからの批判。ファンから見られるイメージと現実とのギャップ。
それらを受け止めるメンバー達の苦しみが本当にリアルで辛い。

現実世界でも多くの人はそういったことを簡単に口にするし、SNSにも上げる。直接言うわけじゃないのだから許されるだろうと、どこかで思っている。

三次元のアイドル達もこうした声に日々さらされて活動してるんだ。
そしてその声の一つは私の声かもしれないんだ。
そう思うと私自身が推しているモーニング娘のメンバー達もそういう苦しみを背負いながら活動しているんだと思うと、胸がぎゅうっとなる。

アニメのキャラクターということを忘れてしまう。
現実のアイドルが苦しみながら挫折しながら、それでも歯を食いしばって、仲間と支え合って笑っているような。

そのリアルさが尊くてしんどい。
そのリアルさが辛くてしんどい。

アイナナは「しんどさ」こそが最大の魅力なのだ。

普段アニメを観ないという方も、三次元アイドルを推している方であればきっとハマると思うのでぜひ視聴してみてほしい。


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