仮面ライダーオーズ 復活のコアメダル視聴感想

今作は劇場公開は既に済んでいて、今更何を〜と思う方もいると思います。
ですが、著者の元にディスクが届いたのが、令和4年8月26日現在のため、今書きます。
ネタバレありです。

本作について

新キャラクターの初代オーズ、謎のグリードのゴーダ。
テレビシリーズから復活したグリードであるウヴァ、カザリ、メズール、ガメル。そしてアンク。
レギュラーキャラである伊達さん、後藤さん、比奈ちゃん、鴻上社長などなどの面々が勢揃い。
オーズ本編から10年後、蘇った古代オーズを倒すために、生き残った人々がレジスタンスを結成して戦っている。という世界観です。
公開前の情報で、火野映司の帰還と銘打っていたこともあり、火野映司がレジスタンスに合流し、共に戦うという想像ができました。

全体的なシナリオについて

上映時間は約1時間。
圧倒的に短い。の一言に尽きます。
これはVシネクスト特撮全てに言えることとも言え、復活のコアメダルだけの問題ではありません。
しかし、短いなら短いなりに捨てるところは切り捨てるシナリオが必要だと思います。
実際、テン・ゴーカイジャーは短いながらも綺麗にまとまっていました。
今作はというと、その切り捨てる部分が極端なのです。
雑なグリードの処理、なぜ復活したのかわからない古代オーズ、ゴーダの行動理念。
割くべき場所が多すぎた結果、時間が足りなかったように感じます。
オリジナルキャストを集めることばかりに目がいって、シナリオがおざなりになってしまった。という印象です。個人的にはグリード全員を蘇らせる必要はなかったと思います。


本作の矛盾、謎

まず大きな謎なのですがなぜドライバーが2つあるのかです。
古代のドライバーは王が暴走した際、グリードと共に封印されました。
石化したドライバーをアンクが持ち出し、それを映司に与えたことから、現代の仮面ライダーオーズは復活しました。
それがどうしたわけか、復活した古代オーズと現代オーズの2本存在します。
「ドライバーごとグリード化して復活した」という説明であれば、ドライバーごとグリード化した仮面ライダーポセイドン(初出 仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦MEGA MAX)という前例が存在します。
その説明であれば、古代オーズにドライバーがついているのにフォームチェンジを使用せず、グリードのコアメダルそのものを取り込むという方法で強化していくという劇中描写に矛盾はありません。
しかし、そうすると終盤のアンクと映司の奇跡の変身である「仮面ライダーオーズ タジャドルエタニティ」の存在に矛盾が生じます。
今作ラストバトルは、赤のコアメダル以外の全ての力を手に入れた「仮面ライダーゴーダ」。それを止めようとする映司とアンクの一騎打ちとなります。
ゴーダ自身はグリードですが、仮面ライダーゴーダはゴーダメダル3枚をオーズドライバーに入れて変身した、紛れもない仮面ライダーです。とすれば、タジャドルエタニティに使用した2本目のオーズドライバーは撃破した古代オーズから回収した、としなければ辻褄が合いません。
そうした場合は、古代オーズ=グリード化した王という考察は成り立ちません。
彼方が立てばこちらが立たずですね。

次の謎は王は何故復活したのか、そして何故グリードを復活させる必要があったのかです。
王の復活に関しては、恐らくテレビシリーズでのグリードの復活と似た現象が起きたのでは?と考えられます。
つまり底無しの欲望が王をグリード化したという可能性です。
紫のコアメダルという、無欲を象徴するコアメダルを使用するという特殊な例ではありますが、テレビシリーズでは火野映司とDr.真木がグリード化。
また、パラレル設定では「劇場版 仮面ライダーオーズ WONDERFUL 将軍と21のコアメダル」で、錬金術師のガラが現代の人間の肉体を奪う形でグリード化しています。
人間がグリード化するという現象は、決して珍しくないと考えていいでしょう。
ただ、テレビシリーズでの10枚目のタトバコンボは最終決戦間近で消失したため、終始王のタトバコンボのメダルの出自は不明のままです。
次はグリード四天王の話です。ウヴァ、カザリ、ガメル、メズールを手駒として使役していた古代オーズ。
当初アンクが復活したこともあり、グリード復活とアンク復活は繋がっている事柄なのだと思っていました。
しかし話が進むにつれ、アンクの復活とグリード四天王の復活は全く関係ないことだとわかります。
何故グリード四天王を復活させる必要があったのでしょうか。
「王が自らの手を煩わせずに、現代の世界を蹂躙するため」と考えることはできますが、800年前に自らに反旗を翻した存在をわざわざ復活させる必要があるでしょうか?また裏切られるかもしれないのに?
また、古代オーズはウヴァの敗北によってグリード全てを見限り、グリードを吸収し、自らの力へと変えて侵攻を開始します。
これはウヴァの敗北によるグリードへの失望のため、と考えられますが、グリード側優勢の際にも王自らが出陣しているため説得力に欠けます。
そもそも錬金術師の助けを借りなければコアメダルを作れなかった王が、グリードを復活させることができること自体疑問です。
今作のグリードはコアメダルが9枚に満たないのに完全体と同じ姿をしていることから、別存在ではないかと考えることもできます。

次の疑問はゴーダはいつ映司に取り憑いたのか?という点です。
作中、映司は実は既に死んでいる、もしくは瀕死に限りなく近い存在であり、ゴーダの憑依がなければまともに活動することは不可能です。
そういった状況から、映司の意識は無いに等しく、体の主導権は常にゴーダが握っています。
映司がそうなった理由は、古代オーズとの戦闘中に少女を庇ったことが原因です。そして回想ではそのシーンが流れるのですが、ゴーダが取り憑くような暇は全くありません。
ゴーダ自身は鴻上ファウンデーションが、映司の協力を得て開発したコアメダルから偶発的に発生したグリードなので、鴻上社長が一枚噛んでいる可能性もあります。
ガラ復活や、間接的な仮面ライダーポセイドン誕生などのトラブルメイカーというポジションでもあるので、ゴーダの更なる成長のために映司を宿主としたのかな、と。

最後に王の中の紫のコアメダルの存在です。
本来、無欲を象徴するコアメダルであり、テレビシリーズでは唯一コアメダルを破壊できる「グリードキラー」とも言えるコアでした。
欲望を無に帰すという性質上、他のコアメダルとの相性は良くないため、亜種フォームを組むことはできません。
にも関わらず、王の体内には紫のコアメダルと他のコアメダルが同時に存在していました。
テレビシリーズでは紫のコアメダルが全て消滅していることを鑑みると、このコアメダルは無欲のコアメダルではない可能性を考慮してもいいかもしれません。
すると、この恐竜コアメダルは映司と真木の体内に存在した10枚のコアメダルの他に、『仮面ライダー×仮面ライダー オーズ&ダブル feat.スカル MOVIE大戦CORE』に登場した"ギル"のコアメダルと考えることもできます。
ですが、その場合プトティラコンボで古代オーズを圧倒できたシーンが個人的に納得いかなくなってしまうのですが…。

以上、総合的な面を見て「復活のコアメダル」は「メガマックス」における「サメ、クジラ、オオカミウオ」メダルの代わりに、「ハチ、アリ、ムカデ」が開発された世界線と考察しました。
また、「エビ、カニ、サソリ」コアメダルの存在から『MOVIE大戦CORE』の世界から分岐した世界とも考えられます。
よって本作はテレビシリーズと、映画要素を一部取り入れたパラレルワールドと考えるべきではないかと思います。

ゴーダは何がしたかったの?

古代オーズを倒すまでは協力したのに、途中裏切り、暴走をしたゴーダ。
彼は「俺は映司の欲望を叶える」と終始主張していました。
結果的にそれが「オーズの力」であり、ゴーダが終盤暴走した原因でもあります。
映司は誰かを救うどこまでも届く手=オーズの力、と思っていましたが、ゴーダはその気持ちを歪曲して純粋な力としてしかオーズを見ていませんでした。
映司の記憶などは全て持っていても、結局はグリードであり、人間の感情などは微塵も理解できていないことがよくわかります。
さらにゴーダは仮面ライダーゴーダに変身すると、最終的には自らの体から映司を弾き出してしまいます。
ここまでしてゴーダは何がしたかったのか。それは「映司になりたかった」のではないかと思われます。
劇中何度も映司とアンクのやり取りを再現したがったり、オーズの変身を「一度やってみたかったんだ」と言ったり、自らが火野映司という存在へなりたかったように思えます。
ゴーダがコアメダルに手を出したのも、映司がコアメダルをまがいなりにも制御できていたことが大きく、彼を越えたいという気持ちがあったのでは?と考えられます。


よかった点

個人的に今作の良かった点は、オリジナルキャストの元気な姿を見れた。これに尽きます。
10年という長い歳月によって、芸能界を引退する方もいるでしょうし、事務所を出てフリーになる方もいるでしょう。
そういった様々な人生を歩んでいたキャストが、また揃ってくれた。この事実は素直に喜ばしいことです。
ありがとうございました。

また、賛否両論がある映司の死も個人的には納得がいくシーンでした。
たしかに主人公が死ぬという、ショッキングなシーンで、できれば映司には生きていて欲しかった。
でも映司の行動理念は一貫して「手が届くのに手を伸ばさなかったら死ぬほど後悔する」ことは変わりないんですよね。
だから咄嗟に少女を守るために手を伸ばしたんだろうし、誰かを守るためにオーズの力を欲した映司らしい最期だったんじゃないかと思います。
楽して助かる命がないのはどこも同じなので。
もちろん、アンクと比奈と映司でもう一度3人で手を繋いで並んで欲しかったし、映司の築いた絆をバースコンビとも分かち合って欲しかった。
そういった場面が少なかったのは少し残念でした。

あと個人的に良かったのは、プトティラコンボになった時に古代オーズとの形勢が逆転したのは、うまくできてるなって思いました。
前述の通り、紫のコアメダルは他のコアを破壊できる、グリードキラーとも呼べる唯一無二の力を持っています。
欲望の塊と化した古代オーズにはまさに特攻とも言えるフォームであり、これを使って形勢逆転は納得するシーンです。

ゴーダとの最終決戦で、精神世界で映司とアンクが対話するシーンがあります。アンクが涙を流しているシーンで、最終回の「ただのメダルの塊が死ぬところまできた」というセリフを私は思い出しました。
再会と別れの涙を流すという「感情」までアンクは手に入れたんだな。と、感慨深いものがありました。

残念だった点

個人的に残念だったのは、グリードがあっという間に古代オーズに吸収されたことです。
なんでわざわざオリキャス集めてまで、グリード軍団再結成したんですか?グリードファンに謝るべきではないですか?
これならもう最初からスピンオフ辺りにでも、出番全部譲ったほうがよかったのでは?ってレベルで、悲しかったです。

同じ理由でバースXも、あんなに大々的に告知しといて結局スピンオフにほとんどいいところを譲っているのも、残念な点です。
バースとバースXの伊達後藤コンビを見れたのは良かったんですけど、せっかく出力上げた新フォームだったのに防戦一方だったのは少し画面の派手さに欠けました。
最近のライダー外伝は、新フォームを噛ませにしたい人でもいるんですかねって感じです。
販促したい気持ちもわかるんですけど、10周年記念でまでそういうことされるの、純粋に辛いんですよね。こっちは放送当時の思い出補正があるから、どんな活躍をするのかワクワクしているので。
フォローするなら、開発段階では対グリードを想定していたシステムである以上、複数のコアの力を手に入れたゴーダとの戦闘は不利だったと認めざるを得ないでしょう。

総評

個人的にはまあまあって感じでした。
一部共感できるシーンはあるんですけど、尺足りないだろっていうのと、映司が死んだショックがあって。
これを「完結編」と言ってしまうのは、なんだかそれは違うんじゃないか?って思ってしまいます。
上記でも挙げたように、多くの矛盾があるのでは?と思うので、これはパラレルワールドと私自身は割り切ってしまいたいと思います。
長々とありがとうございました。

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